外国人の入国だけでなく自国民の出国も原則禁止するなど厳しい対応を取って感染拡大の抑え込みに成功している豪州だが、海外との広範な往来再開は来年の中旬以降となる可能性が高まってきている。

複数のメディアによると貿易・観光・投資大臣が「非常に難しい判断だが、最も可能性が高いのは来年の中旬から下半期」と語り、これを受けた財政大臣も「年明けに往来が大幅に緩和されているとは考えにくい」との考えを示したという。

今後を占う一つの指標として考えられるのはカンタス航空の予約受付の状況で、同社は今年1月には7月以降の国際線について販売を開始していたが、2月には運航再開を10月以降に延期している。これから再延期の報道が続くと国境開放の遅れがより現実味を帯びることになる。

日本から豪州への旅行市場は、一時期は30万人台の前半にまで落ち込んだが路線の増加とともに急回復し、2019年には49.9万人に達して2020年には70万人という高い目標を掲げるまでになっており、旅行業界としても往来再開に期待がかかるところ。

そうした中で、国境の完全な解放よりも前に往来を再開できる可能性があるのがトラベルバブルだ。豪州はニュージーランドとの間では今年4月19日から双方向で隔離不要の入国が可能となっており、さらにシンガポールとの交渉もすでに開始している。

日本についても、昨年10月の時点で(当時は日本の感染状況が抑えられていて変異株も猛威を振るっていなかったとはいえ)スコット・モリソン首相が「日本や韓国とは良い話し合いができている」と話したり、今年2月にも観光大臣が「ワクチン接種と五輪の開催がうまく行けばバブルの可能性あり」と発言したりしてきている。

このほか、別の可能性として、豪州側が「コロナ感染を1人も許さない(zero-tolerance)」姿勢から「ウィズコロナ」へと方針が切り替わることも考えられるが、これについては州政府との合意形成が鍵となる。観光産業関係者は苦しい状況にありつつも国や州は経済情勢の好調さを喧伝しているとのことで、こちらは民意次第ということだろう。

ちなみに、ニュージーランドとのバブル実現でインセンティブツアーやビジネスイベントの需要が回復傾向だと伝える記事では、取材に応じた関係者がシンガポールとのバブルに期待を示しつつも、少なくともそれらのセグメントでオーストラリアとニュージーランド以外への需要が回復するのは来年後半以降との予測を示している。