今週のメールマガジンで最も多くクリックされた記事は、6月28日の月曜日に配信した「日本、ワクチン証明書を7月中にも発行開始へ、隔離免除に道」の記事でした。今月下旬にも証明書の発行が始まる可能性があるということで、発行されれば往復とも隔離の不要な海外渡航に間違いなく近づきますので、本当に久しぶりに元気の出る話題でした。

今年も半分が終わり、コロナ禍が本格化した昨年4月からで言えば1年以上がすでに経過し、これまでは期待しては裏切られるの連続で、私としては荒みがちな心をなんとか慰めてきているわけですが皆さんはご無事でしょうか。

今年の5月か6月に、JOCであったか日本の五輪関係者による「今さら止めるとは言えず、進むも地獄退くも地獄」というようなコメントを読み、まあそりゃそうだろうなと思ったわけですが、今の気持ちとしては「とにかくさっさと終わってほしい」、これにつきます。もちろん開催中は報道などを通してアスリートの活躍を目にするでしょうし盛り上がりも感動もするでしょうけれども、こちらはそれでは飯は食えず、旅行業界の本番は「ポストオリンピック」です。

パラリンピックを軽視するつもりは一切ありませんが、オリンピックが終了する8月8日は「コロナに打ち勝った証」ではなく、「団結の象徴」でもなく、ただなんとか終わったことを公に示すという意味で一つの大きな節目であり、そのあたりから本格的に「ポストオリンピック」の経済振興、そのための観光行政に力が入っていくはずです。

この予言はきっと当たりますが、いざ回復期になればアウトバウンド、インバウンドともに需要の回復は想像を超える勢いとなるはずです。訪日は当然として(米国などですでに海外旅行需要が急増中)、日本でも「海外に行って構わない」と認められれば(認められたと言い張れるようになれば)、想像を超える勢いで需要が回復することはまず間違いありません。昨年のGoToがそうであったように、「お上がいいって言ったから!」と言えるお墨付きは相当大きなインパクトがあります。

例えば欧州は、すでに国によっては検査すら求めずに日本人の受入再開を決めており、日本側で隔離が不要となれば、ある程度リスクを取れる人であればすぐに動くでしょう。旅行会社としては、リスクを考えて慎重にお客様に接するという発想は理解できますが、人間はいつ死ぬか分からない、自分が元気でも旅行できなくなることがある、と多くの人が実感したわけで、感謝されるのは横から勝手にブレーキを踏むことではなく、安心を確保した上で背中を押してあげることになるのではないかと考えます。

南海トラフも含めて恐ろしいリスクは無数にあるわけで、コロナの安全が確保される頃には別の事情で行けなくなっているかもしれず、極端に言えば、大切なお客様が別の理由で亡くなっているかもしれないのです。「危なさそう」なのであれば「危なくない」ようにできないでしょうか。「個人では実現し得ない安全」を提供できればそれは間違いなく旅行会社の貴重な資産であり、さらに安全はリスクがたくさんある時にこそ輝きます。

ちなみに、そうした中で今後重要になると私が考えているのは、9月以降に急激に増えるはずのFAMツアーです。これから右も左も「当社は感染対策を徹底していて~」と言い募り、オンラインの旅行予約画面にはそういった情報が溢れかえるわけですが、そうした中で「私(や私の同僚)が先月行った時にこちらのホテルはこうでした」と言ってもらえたらどれだけ心強いでしょうか。おそらく、私がここで書かずともFAMに対する反響は過去最高レベルになり、主催者にとってのROIも高いものとなるはずですが、主催者側も参加者側も「機を見るに敏」で行動していただければと思います。

そして、マーケティング的観点で言うと、コロナ禍の抑鬱を経て意義深い(meaningful)旅行やサステナブルツーリズム、あるいは死ぬまでに行きたい場所リストに入るようなデスティネーションへの旅行が盛り上がりを見せるという予測も多く示されています。意義深い、は例えば家族とのつながりを再確認するといったものです。どの予想がどの程度当たるか知りませんが、急に走らなければいけなくなった時に足がつったりすると大変ですので、そろそろ準備運動をしておくタイミングになっているのではないかと考える次第です。(松本)