本稿が今年最後のコラムとなる。読者諸氏にとってこの1年間はどのようなものであったろうか。

ワクチンの可能性が見えてきていなかった頃に比べれば大きな変化だが、昨年の今頃のメールマガジンを見返していたら「米国が英国への渡航制限を緩和する可能性があったけれども変異株のショックでむしろ厳格化しそうで残念」と書いており、なんだか何も変わっていないような気分になってしまった。

こんなふうに業界環境としては期待しては裏切られるの繰り返しで、個人的には一喜一憂するのが面倒になってきている。「学習性無力感」という言葉は今年初めて知ったが、できることなら自らの身では体験したくなかった現象だ。

しかもコロナ禍の苦しさに加えて、旅行業界はワールド航空サービス、エイチ・アイ・エス(HIS)と不祥事が続いてしまった。昨日はHISが本件についての記者会見を開催しており会場に行ったが、正直なところ納得感という点ではワールド航空ほどではないにせよ不十分。あくまで主観ではあるものの、ミキ・ツーリストとジャパンホリデートラベル(JPH)の扱いに妙な差を感じた。

ミキ・ツーリストは平林前HIS社長が運営するJHATと共謀したに違いないから社長含め役員は解任、対するJPHはプロとしてJHATの企みに気付けるはずではあったが従属的だったので故意ではなさそう、JPH社長は取締役会に対しJHATとの取引を意図的に隠していたが不問、というのはどうなのだろうか。澤田氏は「JPHも厳しく処理する」と話されていたが、解任について言及があったのはミキのみだった。

いずれも具体的な根拠、証拠が示されていないのでなんとも言えないが、JPHの社長は独断で大型の(不可解さを隠せていない)取引をまとめ、役員会には嘘をついた(またはあえて隠した)ということで、そうであれば結果としてこれほどの大騒ぎとなってしまった今、悪気はなかったとしても責任論は免れないと思うのだが。

さらに、HISとしてはこの問題について「HIS本体は一切関与していない」という立場で、会見の雰囲気からはそのまま通っていきそうな印象を受けたが、主張としては「悪いのはすべてJHATの平林社長(とミキ・ツーリスト役員)」ということなので、未解決のそちら側の報道は続いていくことになる。今回の発端となった「謎の69連泊」も、どうやらJHATが連れてきた顧客企業が勝手に名前を使ったもののように見えるので、騒動自体は年内には収まらない方が自然と感じる。

こうした不祥事もコロナのせいと言えなくはないし、鬼の首を取ったように一方的に批判する気にもなれないが、だからといってコロナ禍だから仕方ないと世間に対して開き直っても理解も同情も得られない。

業界関係者はこうした状況で新年を迎えることになるが、何度も引用している「配られたカードで勝負するっきゃないのさ」というスヌーピーの名言の通り、自分ではどうしようもない物事は所与の条件として受け入れ、そのなかで精一杯勝負をしなくてはならないというのもひとつの真理だろう。

当サイトとしては、3月に立ち上げて昨年始めたメルマガとともに無事に運営してこれたことは成果と言えると自己評価している。ただし、ビジネスとしてはからっきりで、このままでは健全かつ安定的にサービスを継続することは不可能。自分の得手不得手をはっきりと自覚し、また1人で何でもしようとすることの限界も感じているところで、皆様のお力をお借りしつつ来年の早い段階で見通しを付けたいと思う。

そして、業界関係者の皆様に、「配られたカード」で勝負するためのヒントをご提供できる媒体として存続していきたい。そして、そういう媒体が必要と思われる方は是非ともご協力を賜れれば幸いだ。実際にどのような1年になるかは誰にも分からないが、さすがに来年こそは良い年に、と祈っている。(松本)