1月22日でパンナム航空がB747を初めて商業運航してから52年だったらしい。美しいデザインから空の貴婦人とも呼ばれて今でもファンが多いが、現在は惜しまれながらも役目を終えようとしている。

旅行業の歴史を学ぶとB747は「大量輸送時代の幕開け」の立役者として必ず登場する。読者諸氏のなかには、リアルタイムで同型機がもたらした良き時代の興奮を体験された方もおられるかもしれない。

航空会社のコミッションがほとんどなくなろうとしていた2007年にこの業界に入った身にとっては遠い過去の話で、昔は添乗で行く土産物からのコミッションだけで家が建っただとか景気のいい話を聞かされると断絶を感じる時もあった。同じような苦い思いをしたことのある方も少なくないだろう。

一方、同じく2階建てのA380は初の商業飛行が2007年。15年の歴史があることになるが、駆け出しの記者として成田に取材に行ったことを鮮明に覚えており、昨年の生産終了は大変残念だった。

こうして並べてみると、人間の時間感覚とはそんなものなのだろうけれども、52年というと半世紀を超えていてずいぶん長く感じられる一方、A380についてはついこの前のようにも思える。

そしてまた、現代旅行観光業が短い期間でいかに大きく変貌してきたかにも思いが至る。大量輸送時代が到来してから50年。マイクロソフトがエクスペディアを設立したのは1996年。楽天トラベルの前身の「旅の窓口」が日立造船によって開設されたのも1996年。初代iPhoneの登場は2007年。Airbnb創業は2008年。Uberは2010年だ。

そんなことを考えていたら、昨年1月のシンガポール出張の際に聞いた基幹テクノロジーの移りかわりのサイクルが非常に早くなっているという話、そして世界が猛烈なスピードで変化するなかで、「ノーマル」が「ニューノーマル」に置きかわる暇もない「ネバーノーマル」の世界になっていくという話が思い出された。

旅行観光産業はコロナ禍という過去最悪の災いからのリカバリーを、そうした「ネバーノーマル」の世界で実現していくことになる。「ネバーノーマル」についての話者が紹介していたが、Zoomの利用者は19年12月には1日1000人だったところから20年4月には3億人に増えたらしい。旅行観光産業でこれから何が起きるか、今は想像もしていないような展開が待ち受けていてもおかしくない。(松本)