先週の当欄で、コロナの狂騒からいい加減抜け出せるように政府は科学的根拠に基づいた判断を、と主張したところ、お前も科学的根拠を示してないではないかとのご指摘があった。「政府は感染症対策において科学的根拠に基づいた判断をするべきだ」という、人は酸素がないと生きていけないというのと同じくらい当然の話をしているつもりなのだが、それに根拠をとはどういう意味なのだろうか。

もしかすると、「そのうち突然メディアの論調が変わるのでは」と書いた部分についてかもしれない。こちらは読んでの通りの憶測なのでもとから根拠などなく、強いて言えば過去の感染症禍のときもそうだったという前例があるくらい。とはいえコラム掲載の数日後に日経が鎖国に終止符をと社説で書いており、予言的中の可能性も出てきているが。

一方、かねて主張している入国制限緩和についての根拠であれば、毎回書くのもばかばかしいので省略しているものの、オミクロン株の感染力の高さとそれに対する重症化率の低さなどは誰しもが確認できるようになっているところ。そして世界保健機関(WHO)や国際航空運送協会(IATA)などから、入国制限はほとんど効果なしという研究結果も示されている。先行して対策を見直している英国などはそうした根拠をもとに判断をしているわけで、先週の当欄は日本もそれに続くよう訴えたものだ。

もちろん重要なのは科学的根拠に基づく判断であり、制限緩和はそれに付随する結果でしかなく、例えばよりリスクの高い変異株が出てきた際には合理的な対策を取るのが当然。前段でも触れた通り現行の入国制限に効果がないなかで有効なのは昨年に批判されて即撤回した「日本人も含めて一切入国不可」しかなく、その場合いつまでも続けられるものではないという別の問題はあるものの、あらかじめ基準を示したうえで影響を受ける業界への経済支援を用意して断行するならそれも一つのあり方だと思う。

このほか、コメント欄ではまだ開国を歓迎できないという方から「ただのポジショントーク」というご指摘もあったが、以前も書いた通り業界メディアが業界側のポジションに立つのは当然と考えており、続ける限りこれが揺らぐことはない。それにご納得いただけないなら当サイトを離れて日経でもなんでも愛読いただきたい(日経は開国推しなわけだが)。また、波風立てるな、じっとしておけ、というのが本意なのかもしれないが、それは当サイトの理念とは相容れないのでお断りする。

と、ここまで自分なりの理屈を並べてきたが、それが通用しない論点もある。それは、これもコメントにあった「命の価値」的な話で、筆者は「人はいつか死ぬのだし、コロナが近い将来に突然消えてなくなることはない以上気をつけながら前に進むべき」と考える国民の一人だが、当然そうでない方もいる。命は経済と天秤にかけにくいものであり、それを決するのは民意になるだろう。

そして、その意味でも当サイトは多少エゴイスティックにでも主張を続けたいと思う。コロナ禍でつくづく感じたことの一つに、声を上げなければ伝わらないということがある。不満があってもそれを表明しない限り周囲に気付いてもらえることはない。民意としても把握されず、場合によっては都合よく問題ないものとされる。コメントにあった「業界当事者が先頭に立った開国主張を出来ていない」というのは本当にその通りだ。

これほどの苦境に自分の命運を誰かに委ね続けるのか。放っておいてもそのうちコロナ禍はなんとか収束するが、別のウイルスや天災に見舞われてもまた同じように長い間耐えるのか。より良いGoToがもたらされるのをただ願うのか。その時にあなたの仕事や未来は安心なのか。業界の団結を呼びかけたい。(松本)