旅行観光産業でのメタバースの活用事例が増えてきている。

これまで当サイトが取り上げたなかでは、ソウル市が仮想の市役所や観光スポットなどを備える「メタバース・ソウル」をメタバース内で構築し、実際の市民サービスを提供するほか大規模なイベントも開催予定。また、トラベルズーもサブスクリプション形式のメタバース旅行の事業化を明らかにしている。

動きが活発なのは航空会社で、エミレーツ航空カタール航空は相次いで取り組み強化を発表。また、ブエリングも世界で初めてメタバース内で航空券を販売すると決めている。

宿泊産業でも、TTG AsiaによるとcitizenMはメタバース「ザ・サンドボックス」内で仮想の不動産にあたるNFT「ランド」を購入しホテルを建設。メタバースでホテルを建設するのは世界初と自負している。citizenMはさらに現実世界のホテルで利用可能な特典などを付加したNFTコレクションも販売。最終的にはそれらの利益をもとに現実世界でもホテルを建設する計画で、建設する場所はDAO(分散型自立組織)的にNFTの所有者の投票によって決定するという。

また、PhocusWireによると、シンガポールのミレニアム・ホテルズ・アンド・リゾーツもメタバース内でホテルを開設済みであるほか、GLOBETRENDERによるとアスコットもシンガポールでVRやAR、デジタル体験の可能性を探るLyf Innovation Labを立ち上げている。

このほかTTG Asiaの記事では、ホテルがメタバース内で客室や敷地の内外を自由に歩き回れるようにするといった方法で認知度や収益の向上に繋がる可能性や、ディズニーやガーデンズ・バイ・ザ・ベイなどアトラクションによる取り組みもを紹介されている。

ちなみに、クルーズでもノルウェージャンクルーズライン(NCL)が「NFTコレクションの販売でメタバースの世界に船出」とする報道発表をしているが、NFTの販売自体とメタバースは直接関係がなく、発表文ではそれ以上の説明がないため「船出」の意図は不明だ。

なお、アクセンチュアが4月末に発表したレポートでは、世界16ヶ国の1.1万人超の消費者を対象に実施した調査で回答者の64%がすでに過去1年間でバーチャルグッズを購入したりバーチャルの体験やサービスを利用したりしており、さらに83%がメタバースでの支出に関心を示していたことを紹介。

アクセンチュアでは、「メタバース時代はすでに始まっており、消費者向け企業はメタバースに参入するかどうかではなく、どのように参入するかを決めることが重要」であるとし、旅行観光産業についても「実際の旅行に取って代わるものではなく、むしろ包括的な体験を保管するもので、やがて旅行エコシステムの重要な一分となる可能性があると認識することが重要」と指摘している。

ただし、すべての企業や団体がメタバースに前のめりであるわけではなく、エクスペディアのCEOは今年2月に今のところは「メタバースよりもリアルバース」にいたいとコメントしていたほか、アイスランドもメタバースを推し進めるザッカーバーグ氏のパロディ動画を公開している。