最近の旅行の世界では、現地の人々がそこで暮らしているありのままの文化や生活を体感することへの人気が高まっており、いわゆる着地型のツアーやアクティビティへの注目もかつてないほど高まっているところ。日本の「暮らすように旅する」にも通じるトレンドだが、実際のところそうしたアクティビティなどで何をどう見てもらうかは事業者に委ねられている。

こうしたなかで、PhocusWireによるとベトナムで従来の観光客向きツアーではない(=off the beaten track)オーセンティックな体験を約束するガイドツアーを催行していたところ、地元の市場を訪れた際に「犬の丸焼き」が参加者の目に入ってしまう事態が発生し苦情に繋がったという。

ツアー業者のCEOはLinkedInでの投稿で状況を説明したうえで、「地元のありのままの生活を紹介しようとすれば時には参加者にとって驚きや難しさを感じる場面が含まれることもある」とし出発前のアドバイスなどを通して参加者への教育をしたいとの考えを示しつつ、本当のオーセンティックな体験と参加者側の受け取り方のミスマッチを避けることの難しさにも言及して意見の投稿を求めている。

PhocusWireの記事では「正解も不正解もない」という同CEOの言葉のほか、「慣れない文化に遭遇するための準備は、業者だけでなく旅行者も責任を持たなければならない」という意見も紹介。続けて、「遭遇するすべてを肯定しなければならないわけではない」ものの「極端に異なる2つの生活文化を目の当たりにし、自分とは全く異なる選択をしている人々が世界中に大勢いるという事実は覚悟しなければならない」としている。

こうした話題は、鯨やイルカを食べる日本にとって必ずしも他人事ではない。とはいえ私見としては、特に食についてはそもそもよその文化に対してとやかく言うこと自体がナンセンス。もちろん種の保存とか公衆衛生に関わるような話は別だが、かわいそうだからどうだなどという主張は価値観のおこがましい押し付けでしかない。

一方、どうしてもそれを受け入れられない旅行者に無理やり見せる必要がないのも当然のこと。同記事中でも、業界的観点から「off the beaten track」の言葉の曖昧さに問題があるとする声が取り上げられ、顧客の期待をコントロールする「expectation management」が重要とも指摘されている。