PhocusWireは8月28日、ホスピタリティ産業向けテクノロジーを開発するCanary Technologiesの共同創業CEOによる寄稿を掲載した。
ホテルにおけるテクノロジー活用の可能性を訴えるもので、旅行者の73%がスマートフォンなどによるセルフサービスのテクノロジーを導入しているホテルを選ぼうとするとの調査結果も出る世の中で、宿泊施設側が宿泊の前後を含めた「デジタルゲストジャーニー」の質をどのように向上することができるかを論じている。
例えば予約から到着までの間でも、テクノロジーを使って顧客とやり取りをすることで業務の効率化や満足度の向上が可能。さらに、例えば多くのホテルがアメニティやアップグレード、アクティビティなど、顧客が滞在中に利用可能なサービスやプロダクトを上手に伝達できていないが、実際にはアップセルの大きなチャンスにもなる。
そして、到着前のコミュニケーション手段としてEメールに依存する例が多いが、現代のコミュニケーションの基盤となっているLINEやMessenger、WhatsApp、あるいはSMSなどのテキストベースのツールにも目を向けうべきとの指摘。
また、モバイルチェックインとモバイルキーを組み合わせればフロント業務を大幅に削減してチェックイン待ちの列を解消し、スタッフはサービスの向上に集中できるようになるとしている。
一方、滞在中では物理的な体験とデジタルの体験のシームレスな提供が重要。到着後に自動でウェルカムメッセージのテキストを送信し、分からないことがあればそのまま返信で質問できるように案内して、さらにWiFiの接続方法やチェックアウト時間、レストランの営業時間などの一般的な質問には自動応答することもできる。最も先進的な事例ではChatGPTなど生成AIの組み込みも可能だ。
このほか滞在後でもチェックアウトの手続きをリモートで受け付けるなど効率化したり、感謝を伝えるメールやメッセージを送って宿泊者アンケートへの協力を求めたり、さらに次回の予約獲得に向けた施策を案内することもできるとしている。
なお、TRVLWIREではこうしたホテルのテクノロジー活用策についてこれまでも多くの記事を取り上げており、例えばチェックイン手続きのアップグレードでは上述のようなメリットに加えて「手続きの標準化による顧客体験の安定」「セキュリティの向上」「より高品質なデータ収集」も指摘。
一方、常識にとらわれずにサービスを革新する方法の記事では、より具体的なメッセージの送り方などとともに館内だけでなく周辺の施設や店舗でも部屋付けを可能にするアイディアなどを紹介。モバイルキーについて、リゾートなどベルパーソンが部屋までの道中でアップセルできる施設では導入すべきではないとするなど実用的なアドバイスを得ることができる。
また、ファーストタイマーでもリピーターのようにパーソナライズしたサービスを受けられるようになるサービスを開発するスタートアップ企業も登場している。