ワクチン接種が順調な米国や英国、そして旅行・観光産業支援と移動の自由のために受入再開計画を発表しているEUなどが観光のリカバリーを先導する中で、ポストコロナの旅行販売の課題も取りざたされ始めている。

TTG Asiaの記事では、GetYourGuideが米国で実施した調査で、「3ヶ月以内に旅行する予定あり」との回答が70%に達したにも関わらず予約済みは8%のみに留まったとの結果を紹介。残りの60%超すべてではないとしても、多くが間際の申込みを希望してくる可能性が考えられる。

同様に、GetYourGuideの予約データでは、米国はすでに予約数が2019年を超えているほか、豪州やニュージーランドも好調に推移。また昨年の11月と12月には、英国/ドバイ間で隔離不要の往来が可能になったこともあり、予約数が2019年比で3倍から4倍に急増したという。

こうした回復基調はこの産業にとって歓迎すべきものではあるものの、逆に需要の急増に対して、現地ガイドやホテル・飲食店の従業員などの雇用が間に合わず、供給が間に合わない状態が顕在化。例えば米国では、ホテルの総支配人が客室を清掃したり、デルタ航空が運航乗務員にラウンジ清掃のボランティアを呼びかけたりしている。

また、居住地と旅行先の国・地域双方の出入国制限があり、しかも突然見直される懸念もあることから、消費者側の心理として旅行には行きたいけれども申込みはためらうというジレンマも生じる。

こうした中である米国の旅行会社では、まず顧客へのニュースレターで国境開放の情報を伝えるとともに、利用可能なクルーズやホテルの割引情報を同時に掲載し、コンバージョン率を向上。ソーシャルメディア上では、日々成約した旅行の情報を発信したという。

さらに、この会社は供給不足の課題に対しても、先にサプライヤーに電話をかけて在庫を確保した上で付き合いの深い顧客に旅行の案を提示。この結果、提案を受けた5人中4人が申し込んだ。

このほか、当然ながら各国の状況の最新情報を収集し更新し続けることや、消費者が急に予約を始めるまでに在庫の準備など「販売できる状況」を作っておくことも重要で、観光局や航空会社と緊密な情報交換が一つの鍵となる。