「グアム ワクチン」とGoogleで検索して気付いたのですが、いつの間にかワクチンに関する検索結果の情報が非常に充実していました。国別の接種率が地図上で色分けして表示されていたり、接種が始まってからの推移がグラフで示されたり、接種できる場所や優先接種のルールを調べられるタブがあったり、さらに関連ニュースやよくある質問なども網羅的に集約されていて、さすがの充実度です。一方、頑張って情報を収集して発信していた、あるいはその準備を進めていた会社やサイトからすると迷惑なんてものではありませんが、Googleではよく見られる振る舞いで、泣き寝入りする以外に選択肢はありません。
ただ、米国ではちょうどGAFAなど巨大IT企業を規制する法案の審議が進んでいるところで、その一環でGoogleが検索結果においてExpediaやSkyscannerの情報よりもGoogleのホテル検索やフライト検索の情報を優先的に表示することを禁止する法案(American Choice and Innovation Online Act)が下院本会議に送られることが決まりました。今後更に激しいロビー活動が展開されることになるので先行きは不透明ですが、蟻の一穴になるかもしれません。
これに対してGoogle側は、「法案が通ると多くのユーザーが使っている便利なサービスを提供できなくなり、中小企業のビジネスチャンスも損なわれ、プライバシーやセキュリティの懸念も高まる」と警告を発したようです。
たしかに、冒頭で触れたワクチン関連情報の集約などは豊富な開発リソースを持つからこそ迅速に導入できてその満足度も高くできるわけで、それ以外にもこの半年程度の間で旅行業界向けの需要予測ツール「Travel Insights with Google」や、Googleマップで空港や駅をAR技術で案内する機能やナビでCO2排出量を最小化するルート選択機能、さらに特定デスティネーションの往来制限緩和のアラート機能などが次々に導入されています。これらがなくなればどこかの会社やサイトがなんとかしてくれるのを待つしかなく、Googleレベルのサービスが提供される保証もありません。
とはいえ、Google(に限らずIT系大手の多く)の「これが最も便利だからユーザーはそれに合わせるべし」という姿勢は独善的ですし、また先述のGoogleの警告も逆にいえば「便利なサービスを提供しているのだから我慢するべきだ」という主張です。また「多くのユーザーが使っている」と主張している点も、実は「そこに誘導されるから無意識に使っている」あるいは「使わざるを得ない」ことが多いことを考えると欺瞞的でもあり、規制を避けるべき理由とはならないでしょう。
法案は5本あって中には企業分割を可能にするものもあるため、巨大な氷山の小さな一角である旅行流通がどのような経緯をたどってどのような結論にいたるかは全く不明です。しかし、「プラットフォーム上で得られたデータについて、それを公開せずに自社のプロダクトやサービスのためだけに使うことは認めない」といった条件も盛り込まれており、Googleが旅行流通に及ぼしている影響を考えると、法案が通った時に旅行業界で起きるかもしれない変化の大きさは容易には想像できません。
個人的に、落とし所として可能性を感じるのは「選択制」です。Facebookなど他のサービスを含めて、一方的に機能やサービスを押し付けられるのでなくユーザーが望む方を選択できるのが誰にとっても望ましいはずで、プライバシーポリシーなどでは実際にそうなっているわけですので、そのように落ち着いていく可能性は十分あると思うところです。