世界保健機関(WHO)が懸念すべき対象として「オミクロン」と名付けた変異株に対し、各国が入国の制限を強化している。
Travel Off Pathによると、EUは欧州委員長のウルズラ・フォンデアライエン氏は各国に対し「非常ブレーキを作動し南部アフリカ地域からの航空路を停止」するよう提案。
こうしたなかで、同記事の公開時点で航空機の運航停止を実行した国はものの、イタリアは南アフリカ、レソト、ボツワナ、ジンバブエ、モザンビーク、ナミビア、エスワティニからの入国を禁止。ドイツは南アフリカからのフライトについて、ドイツの居住者のみ搭乗可能とし、到着後には14日間隔離を義務付けた。
英米両国と日本でも隔離の強化などを実施。英国では対象国からの入国時に2285英ポンド(約35万円)の自己負担による10日間隔離を義務付け、さらに海外からの入国者全員に2日間の隔離と2日目のPCR検査を必須とした。
こうしたなかで、海外メディアもオミクロン株が話題を席巻しているが、こうしたなかで渡航の受入停止については慎重さが求められるとの意見も多い。
米食品医薬品局(FDA)の元長官であるスコット・ゴットリーブ博士は、「厳しい渡航制限を課すことは短期的にも長期的にも非生産的」「南アフリカなどの国々の社会にとって破滅的な制限を課すには分からないことが多すぎる。“行動しながら考える”のは公衆衛生対策として賢明でない」とTwitterに投稿。
また、THE CONVERSATIONも、そうした脊髄反射的な制限は、それらの国々にとって透明性のために変異株を報告したにも関わらず罰を受けることとなり、今後は変異を隠す方向でインセンティブとして働くと指摘。変異株に関する情報が限られるなかでは盲目的に拒絶するのではなく、検査や追跡、隔離などを組み合わせ、また高所得国や低中所得国国のワクチン普及を支援するべきだと訴えている。
ワクチン不平等の是正を求める声は以前から上っており、普及に偏りが出れば結果的に新たな変異株が猛威を振るって再び世界の旅行観光産業に低迷をもたらすとも予言されていた。