ロシアによるウクライナ侵攻に対する旅行観光産業の対応状況は下記の通り。
TTR Weeklyによると、国連世界観光機関(UNWTO)は、ロシアの加盟停止について臨時で開催した理事会で結論を出さず、数日中に臨時の総会を開催して判断することを決定。侵略は国連憲章に反し、UNWTOの基本理念とも相容れないと批判も。
PhocusWireによると、Googleはロシアにおける商業活動のほとんどを停止しホテルなどの広告も大きく削減。一方、宿泊施設などの企業による難民向けの支援情報を簡単に見つけられるサービスも。
旅行流通関連ではExpediaやBooking Holdingsがロシア発着の旅行の取り扱いを停止したほか、GDS3社もアエロフロートの流通を停止しているところで、SkiftによるとBooking傘下のKayakとTrip.com傘下のSkyscannerも停止。これに対して、Trivagoはロシアのホテルを掲載し続けているという(Trivagoはロシア人がオーナーで制裁の対象となっているサッカーチーム、チェルシーのスポンサー契約も継続)。
Skiftはまた、TMCが顧客に対するサービス提供義務と社会的な要請との間で難しい判断を迫られていることも紹介。これによると、CWTはロシアの顧客へのサービス提供を継続。Amex GBTやFlight CentreのFCMも現地の提携代理店との関係を維持しており、BCDはコメントを拒否。一方、Corporate Travel Management(CTM)は提携を停止し、TripActionsはロシアとベラルーシへの渡航手配を終了したという。
航空や鉄道では難民に無償または安価で移動手段を提供する企業が増えているが、Travel Weeklyによるとウィズエアーは3月末までとしていた実施期間を4月10日までに延長したほか座席供給量も拡充。TTGによるとフィンエアーも東欧の対象都市からヘルシンキへの片道運賃を最大95%割引で提供している。
このほか、Travel Weeklyの別の記事では、デルタ航空が赤十字に100万ドル、国連難民高等弁務官事務所に10万ドルを寄付したことを伝えている。なお、同様の取り組みではカーニバルクルーズラインが50周年の記念イベントで5万ドルを寄付している。
また、Simple Flyingによると、アムステルダム・スキポール空港はロシアからのエネルギー輸入への依存を減らすため空港内の温度設定を1度引き下げ。オランダ国内でも多くの家庭で暖房を弱める運動に参加しているという。
Travel Weeklyによると、ホテルでもマリオット、ヒルトン、IHG、ハイアットがロシアでの開発計画を停止し、さらにハイアット以外の3社はモスクワオフィスも閉鎖。IHGを除く3社はホテルの営業を継続しているが、状況を注視し他国の施設では難民への無料宿泊を提供するなど支援活動にも取り組んでいる。
ちなみに、こうした状況での営業継続判断の難しさについては、航空・旅行系ブログのliveandletsfly.comが解説しており、過去にはシリア制裁でフォーシーズンズホテルがダマスカスの施設の運営を終了したところ、オーナーが同ブランドでの運営を継続。現在もブランドの毀損を継続。ロシア政府も外資企業の資産差し押さえを示唆しているところで、その点もポイントになっているという。
なお、制裁はロシア人旅行者にも影響を与えており、プーケットやバリなどから帰国できず現地で預金を引き出すこともできない事例が報告されているところ。さらに、ロシアからの需要への依存度が高いデスティネーションは今後のコロナ禍からのリカバリーの見通しも狂うことになる。