航空会社やホテルによる流通戦略のなかで、「属性ベース検索(Attribute-Based Search)」または「属性ベース購買(Attribute-Based Shopping、ABS)」という言葉を聞いたことはあるだろうか。簡単に言えばユーザーの好みや必要な要素をもとに結果を返す検索方法やそれを元にした販売手法で、海外では少しずつ注目が高まっている。

ABSはもともと2008年ごろに航空業界で生み出されたもので、シートや機内食、手荷物などをひとまとめにして販売する旧来型の方法ではなく、それらをバラ売りしようとする考え方。サービスのバラ売りはLCCが先行していたがFSCにも浸透しており、現在のNDCにも繋がっている。

そして属性ベース検索については、ATPCOのYouTubeアカウントでハワイアン航空のジョージ・ブライアン氏が説明してくれている。

これによると、旧来型の航空券検索は「出発地」「到着地」「日付」「人数」「経由便可否」など輸送サービスの基本要素のみでデータを引き出してきたが、属性ベース検索ではそれらに加えて機材、機内食、無料受託手荷物、ラウンジアクセス、シートの種類と位置、機内エンターテイメント、機内インターネット、変更ルールなど旅行者のニーズに関わる多様な属性をもとに結果を返そうとする。

この結果、例えば旧来型でホノルル/ロサンゼルス間、往復、10月1日出発10月30日帰着、エコノミークラスと検索したときに、1番上に表示されるのは最も運賃が安いA社でそれよりも高くなるB社の掲載順位は下位となるが、そこに手荷物や機内食の有無などの属性を計算に入れると実はB社の方が結果的には安く済むといったケースが想定され、それに対して属性ベースでは、ユーザーニーズに合ったB社が最初から一番の選択肢として表示されることになる。

ただし、ユーザー側の視点では歓迎すべき進歩であるものの、誕生から10数年が経過した現在でも取り組んでいる会社は一握りとのこと。どの属性を使用するか、機内食と軽食の区別など属性をどのように標準化するかなど課題は多く、今のところ普及には至っていないという。

ちなみに、属性ベース検索以外でも新たな試みは登場しており、例えば「スキーに行きたい」といった希望に合わせて就航先を提示する「アフィニティベース検索」や、「800ドルで行けるところ」を調べられる「ビッグデータ検索(エクストリーム検索)」、さらにそれに加えてAIや機械学習によってユーザーが欲しい物を予測して提示するパーソナライゼーションなども注目を集めているところ。そして、属性ベースを含めこれらはすべて、もともとは旅行会社のスタッフが提供してきた機能であるとも言える。

ホテル予約でも米旅行者は高い期待、増収可能性も

ABSについてのユーザーの意識については、ホテル向けにモバイルベースのPMSなどを提供するStayntouchがニューヨーク大学プロフェッショナル教育(NYU SPS)のJonathan M. Tisch Center of Hospitalityと共同で米国人旅行者1000人超を対象に意識調査を実施。6月28日に発表した

これによると、ABSの概要について説明を受けた回答者の20%は非常に強い興味を示したほか、37%も強い興味を見せ、全体では97%が一定以上の興味ありと回答。また、希望に合致した部屋を予約するのに追加料金を支払う可能性についても、「多少可能性あり」が33%と最も多く、「可能性大」が13%、「分からない」が25%などとなり、増収につながる可能性が示された。

希望の高かった属性はベッドのサイズや数、禁煙、シャワーやバスタブの有無、景色など。また、それがあるなら追加料金を支払っても良いという属性では、景色を選んだ回答者が4分の3に上ったほか、バルコニーやベッドルームの広さも3分の2の回答者が選んだ。

このほか調査では、旧来型の購買手法に比べてアップグレード費用や追加手数料の透明性が高まる、客室の特徴を明確に理解できる、好みに合わせてカスタマイズできる、といった期待も示されたという。

レポートでは、客層ごとの回答の傾向や「バラ売り」をした際にホテルのイメージにどう影響が生じるかといった項目についても紹介されている。