西オーストラリア州パースでツアーオペレーター「Explore Tours Perth」と観光果樹園「The Orchard Perth」を経営するアダム・サンダース氏が、自身のFacebookで苦しい胸中を記している。

一部で回復が先行する国々は別として、世界の多くの旅行・観光産業関係者に共通するであろう絶望的な悲鳴が少しでも多くの人の目に触れるよう、同氏の許可のもと和訳して掲載する。


世界中で多くの方が亡くなっている中で、こんなことを書くのは少し自分勝手かもしれない。

特に、信用格付け機関のS&Pが「世界で最も経済情勢が優れている」と評価したらしい西オーストラリア州に住んでいるとなるとなおさらだろうか。

それでも、今の僕はかなり厳しい状況にある。

この13ヶ月間、僕は自分が経営するExplore Tours Perthがほとんど死んだも同然なのも、The Orchard Perthが同じく存続の危機にあるのも、どちらも自分のせいではないと自分に言い聞かせてきたけれども、まったく終わりは見えない。

何年もかけて築き上げてきた素晴らしいチームのほぼ全員、十数人の従業員を手放さなければならなかったことは、僕の心をめちゃくちゃに痛めつけた。

それでも、これまでの国境や州境の閉鎖自体は、僕のビジネスを台無しにしてくれたけれどもきっと西オーストラリア州とオーストラリアの経済、それから住民にとって最善の選択だと思って我慢してきた。

しかし、今回のロックダウン(訳注:4月24日から26日までのロックダウン)は、本当に精神的に苦しい。

パースや西オーストラリア州で暮らす多くの人々にとってもこのロックダウンはきっと迷惑なもので、友人と会うことや外出することができなくなったり、あるいは週末に旅行を楽しむ予定が消えてしまった人もいるかもしれない。でも、ロックダウンが終われば、生活はすぐに元に戻るだろう。

そして、政府によると「経済は好調で失業率は低下していて、オーストラリアは世界の羨望の的」らしい。

そんな中で、僕や観光業界の関係者に目を向けてほしいと言うのはやっぱり自分勝手だろうか。

たしかに僕と僕の家族がコロナウイルスから守られていることには感謝している。けれども、政府が景気の良さやコロナ対策の順調さを盛んに発表している裏では、大きな代償を払っている少数の人々がいるはずなのだ。

今回は、ホテルでの隔離体制が少し不十分だったからといってロックダウンに入ったわけだけれども、その結果がどうなるかというと、多くの市民にとっては単なる「迷惑」であっても、観光業に頼る僕や他の人々にとっては「壊滅的」なものになってしまう。

この週末だけで、僕は何千ドルも失った。すべての案件がキャンセルになったにもかかわらず、スタッフへの賃金の支払いはしなければならない。今週末の収入はゼロだったが、請求書はすべて残っている。

JobKeeper(訳注:3月末で終了した給与補助制度)も何かしらの補償もなく、政府ではなく僕が負担するしかない。

週末1回限りなら耐えることもできるけれども、過去13ヶ月で僕たちは数十万ドルとまではいかなくてもすでに数万ドルを失っている。小さな会社なのに。

だから今週末は、耐えていたものが限界を越えてしまってどうしようもなくなった気分でいる。

この文章を書いて何がしたいのか自分でもよく分からないが、思いを吐き出したら少しは楽になるかもと期待しているのかもしれない。

また、願わくば観光業界やイベント業界で働く僕のような人がパース市だけでも数千人ほどいて、今とても苦しんでいるということが少しでも広まってくれたら嬉しい。マーク・マガウワン州首相やスコット・モリソン首相の目に触れるかもしれない。

僕たちはコロナ禍とそれに対する政府の対応に翻弄されるばかりで、正直なところできることはあまりない。

その中で僕はただ、経済もコロナ対策も絶好調だと自賛する政府 (州政府と連邦政府の両方) が、壊滅的な打撃を受け生活を奪われているこの業界の人々のことを忘れることのないよう願う。