最近、海外の記事では「open」や「boom」など景気の良い単語が増えています。また「recover」とか「restart」とか、「re」のつく単語も多くなってきました。大変羨ましい限りですが、それはそれとしてワクチンの接種が進むとこういう未来が待っているという話でもあります。
TRVLWIREは、旅行・観光産業のグローバルな流れをいち早く日本でご紹介することで、未来を予測するお手伝いをすることを当面の目的としており、その意味では世界全体が等しく暗闇の中にあった1、2月ごろまでとは異なり、最近はその目的通りの価値を実現できて来ているのではないかと感じています。
以前ご紹介したOur World in Dataのデータを見ると、日本のワクチン接種率は依然として他国より劣ってはいるものの、ここにきて上昇のカーブが急になってきており、期待も高まります。緊急事態宣言の延長、オリンピックの行方など考えはじめると頭が重くなる要素は多いですが、明けない夜はありません。
そして、これからのリカバリーに目を向けると、国によっては「検査で陰性」または「感染から回復した人」も隔離免除の対象としているものの、ワクチン接種が往来再開の鍵になることは間違いありません。そしてその意味で、海外でワクチンを接種する「ワクチンツーリズム」は、実際には接種率を大きく引き上げるものではないとしても、往来の早期再開に繋がる話ですので旅行業界としては是非とも盛り上がってほしいものです。
最近では、日本市場に馴染みの深いグアムがワクチン(Vaccine)を接種しにバケーション(Vacation)で来訪してもらう施策「AirV&V」に力を入れようとしているところで、Airbnbにかけたその名付けの是非はさておき、昨日には韓国からのワクチンツーリズムに道が開いたようです。
韓国との間で何が起きたかというと、チェジュ航空がワクチン接種済みまたはグアムでの接種を希望する旅行者を運びたい考えであったところ、当初は韓国で主流のアストラゼネカ製ワクチンがグアム側で認められておらず到着時に隔離が必要になる流れだったのですが、知事の広報担当者が免除対象への追加を認める方針を示したそうです。韓国側ではワクチン接種済みの国民はすでに隔離の対象外となって いるそうなので、これで往復とも隔離なく海外旅行ができることになります。
上図の通りワクチン接種率は日韓間に大きな差はなく、となると少なくともこれは韓国にできて日本にできないことではないでしょう。米本土でもニューヨーク、テキサス、アリゾナ、フロリダ、アラスカなどの各州では旅行者もワクチン接種が可能だということで話題になっており、日本でワクチンツアーと銘打って募集しようとすると副反応はどうするとか旅程保証はどうなるのかなど色々と問題がありそうですが、うまく前に進める方法はないだろうかと考えてしまいます。
昨日のJTBの決算会見で山北社長は9月から一部の国で往来が再開される可能性に言及されましたが、旅行業界は、JTB単体で7200名も人員が減るような想像を絶する苦境の中にあるわけで、ワクチンツーリズムに限らず、今まではタブー視されていたり躊躇されたりしていたことでも可能性を探るべきですし、役所にもそうした動きに対して虚心坦懐に向き合い、支援してほしいと願うところです。
ちなみに、ワクチンといえばユナイテッド航空が米国で、ワクチンを接種した人を対象に無料航空券をプレゼントするキャンペーンを実施していて、そのグランドプライズがなんと5組10名分の年間無料パス(しかも利用クラス不問!)という超ふとっぱらの内容でたまげました。日本でも一定のワクチン懐疑論があることを考えると、航空会社や鉄道会社、ホテルなどが同様のニンジンをぶら下げることもありえるだろうと期待しています。(松本)