トラベルポートがこのほどエデルマンと共同で消費者を対象に実施した調査で、旅行観光関連企業への「信頼」が疑問視されている状況が明らかになった。旅行費用やキャンセルポリシーの透明性やコロナ対策、プライバシー保護などについての取り組みがかつてないほど注視されており、コロナ後の旅行市場において対策が必要不可欠であるという。

調査対象は英国、イタリア、スペイン、サウジアラビア、米国、カナダ、インド、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランドの10ヶ国の1万人。傾向として、欧米各国とインドは総じて信頼度が低く、サウジアラビアは中程度、インドネシアでは高い結果となった。

調査では、旅行の購入先を決定する際に信頼が最も重要だと答えたのが46%に達しており、さらに信頼できる購入先であればオプションなどを追加購入すると答えたのが48%、パッケージなどをアップグレードすると答えたのも42%に上るなど、信頼によって消費行動が大きく変化する傾向が示されたという。

消費者の企業への期待値は、AmazonやNetflix、Spotifyなどの登場によって完全に変わり、いつでもどこでもどのチャンネルでも優れたサービスを提供し、他のユーザーからの口コミを参考にコストやブランドを比較できるようにした。旅行業界にもこれと同等のサービスレベルが求められている。

しかし、産業別で見ると、コロナ禍もあってか医療関係が61%と高い信頼度を示し、飲食、テクノロジーが55%などとなったのに対し、旅行観光産業は46%となった。自動車産業の45%、日用品の44%、エネルギーと通信の43%、金融の41%よりは高かったものの、回答者の70%超が旅行観光関連企業に信頼を裏切られた経験があると答えたという。


より細かく見ると、グローバル展開するOTAやメタサーチの信頼度は49%で、各国の旅行会社は店舗もウェブサイトも45%弱となった。また、FSCやリージョナル航空会社は50%強、LCCは40%となった。これに対し、主要なグローバルホテルチェーンは57%と高い数値を残している。

信頼を左右する重要な要素では、費用の透明性が1番に挙げられており、消費者は隠れた費用(hidden cost)を最も嫌っているという。55%が隠れた費用がないことがもっとも重要と答えた一方、60%は企業が隠れた費用を設定していると回答した。

一方、コロナ対応についてはホテルの評価を牽引するなど比較的高い評価を得ており、分かりやすく一貫した安全対策と透明性の高いキャンセルポリシーが鍵となっているという。ホテルの強みは顧客体験に焦点を当てていることで、航空会社は顧客を「パッセンジャー」と呼ぶのに対しホテルが「ゲスト」と呼ぶことはその一例であるという。

プライバシーについては、自ら同意して情報を提供しているかどうかが鍵となり、ソーシャルメディア上の情報を収集する企業を信用しないと答えた回答者は65%に上った。

このほか、信頼を損ねる要因として、サービスで残念な体験をした場合に他人にそれを話すのが90%、ネット上に投稿するのが40%となっており、ネガティブな口コミの影響に注意が必要だとした。

旅行情報で信頼する情報源では、口コミが58%と最も高く、観光局などの公式の情報が49%で続き、旅行観光系企業が45%、テレビや雑誌などのメディアが38%、有名人やインフルエンサーが27%となった。トラベルポートでは、インフルエンサーの評価の低さは有償での投稿もある中で費用と同様に透明性が疑問視された結果かもしれないと分析している。

そしてトラベルポートは信頼について、「構築するのに時間がかかるがすぐに壊れるもろいもの」であるとし、「透明性」、「個々人に合わせてパーソナライズした提案」、「インフルエンサーに金を払わず真実を伝える」、「これからの経済を支えるZ世代の支持を得る」、「より良い顧客価値を提供し、それをシェアしてもらいやすいようにする」ことが重要だと訴えている。