今週は、エイチ・アイ・エス(HIS)の子会社であるミキ・ツーリストとジャパンホリデートラベルがGoToトラベルに関して給付金を不正受給した可能性が報じられ、ワールド航空サービスの雇調金問題に続いて業界内外を騒がせている。

ワールド航空の問題が報じられた直後のコラムと同じく分からないことだらけなので書けることは限られるが、できることなら問題は小さく済んでほしいとも思う。しかし、難しいだろう。他の事例では逮捕者も出ている。どうしてこうなると想定できなかったのか。

それにしても、悪いことは続くものだ。2021年も残り3週間となり街はクリスマスや年越しに向けて楽しげな雰囲気だが、旅行業界では「二度あることは…」でまたなにか出てきはしないだろうか思ってしまう。年内に何もなかったとしても年明けには分からない。それに、これが最後だったとしても損なわれた旅行業界の信頼をどう回復するのか。

さらに不祥事だけでなく、出入国再開への道筋も不明瞭なままで、このままだと変異株が出てくるたびに出入国が止まる可能性がある。そうなれば当然海外旅行も訪日旅行もまともに売れるはずがない。さらにさらに、そんな状況でも旅行業界は気持ちを切り替えて2022年のリカバリーに邁進する意欲を保ち続けることが求められる。

日本航空の赤坂祐二社長は10日の定例会見で、国境開放の期待が高まりつつあったなかでオミクロン株が発生し即座に入国禁止の措置がとられたことについて「頭を叩かれたよう」「目の前が真っ暗になった」と話されていたが、旅行観光産業の関係者には、そういった不安と向き合いながらも前を向き、できることを探し死にものぐるいで取り組むことが求められていく。多くの企業や関係者がそれを20ヶ月以上続けてきたうえでだ。我々はそれをこれからも甘んじて受け入れるしかないのだろうか。

「スヌーピー」の「配られたカードで勝負するしかないのさ」という言葉が日本でも知られているが、その時々の状況を受け入れた上で最善の結果を求め行動するのは人間として当然のことかもしれない。

しかし、カードのより公平な配り方を希求してはいけない理由はないし、ルール自体の改善の余地を無視するのも間違いだ。社会の一員として全体の幸福のために一定の我慢を強いられるのはやむを得ないが、それはできる限り公平でなければならず、またルールにも合理性と一貫性がなくてはならない。

国連や国連世界観光機関(UNWTO)はアフリカ南部各国を対象とした入国制限を差別的と批判しているが、日本は全世界を対象としているためそのロジックは通用しない。しかし、だからと言ってこれが正解なのだろうか。これで流入阻止が他国よりもうまくいくと、今後は徐行運転と緊急ブレーキの繰り返しとなるのが容易に想像でき、先程も書いたように国際旅行に関わる仕事はリカバリーを望めない。

であれば、安全に配慮しつつ往来再開も遠のけないあり方を要望するとか、基準やロードマップの明示を求める、それが無理なら損失を補う支援を求めるのは当然の権利だろう。

ここで残念なのは一連の不祥事で、ルールを逸脱し社会を欺いた印象が付いているなかで権利を主張しても理解は得にくい。その意味で、新体制の日本旅行業協会(JATA)がどのようにイメージを刷新し、何をどう主張していくかに、かつてないほど大きな期待がかかっていると言えるだろう。(松本)