筆者は5月16日から豪州へ出張し23日の夜便で帰国する、はずだった。しかし、23日夕方のPCR検査で陽性が発覚。隔離など紆余曲折を経て日本に帰ることができたのは11日後の6月4日となった。他の国に行った旅行業界関係者でも同様のケースが発生していると聞いており、今後の需要回復とともにどこの国を旅行中であっても運悪く陽性反応が出ることは当然想定されるところ。そのリスクに対して旅行者当人や旅行会社はどう備え、いざという時にどう行動するべきか、実体験からまとめる。

なお、状況は流動的なのでここで記すことが今後どれほど通用するかは分からない。とはいえ、逆に未来に目を向ければ別の感染症で同様のトラブルに見舞われる可能性も想定できるところで、本稿ではデスティネーションや今回の筆者の体験のみにとらわれず、なるべく普遍的な「使える情報」を書き残すことを目指している。

帰国前検査は早めが吉か

筆者の陽性が発覚したのは、日本に帰国するために空港で受けたPCR検査だった。21時の便で16時40分頃に検査をして18時頃には陽性の結果が伝えられた。この時点で、泣いてもわめいても日本行きの便に乗ることはできなくなる。

ただし、シドニー空港の検査場では当日の再検査がルール上不可だったものの、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症相談窓口に確認したところ、直前に陽性の結果が出ていたとしても改めて検査をして陰性の結果さえ得られれば入国は可能とのこと(※5月23日夕方の回答)。偽陽性の可能性もゼロではないので、費用はかかるしダメ元にはなるが、認められるならばこのタイミングでの再検査という選択肢もあり得る。

また、結果を早く知れれば行動に余裕が出ることも間違いないので、今思えば出発当日でなく「出発前72時間以内」の範囲を有効に使うこともポイントだったかもしれない。後述する「PCR陰性以外の入国方法」でも、最初の陽性が早ければ早いほど帰国も早くなる。

陽性時の隔離要件をまずは確認、移動に注意点も

さて次は陽性が発覚した後のステップだが、ここからは国や地域によって求められる行動は異なる。(世界ではすでに陽性が出ても隔離不要となっている場所もあると聞く。)

筆者の場合は、ニュー・サウス・ウェールズ州の規則に従い7日間のホテル隔離に入った。ここでのポイントは、滞在国・地域ごとに決まっているはずの隔離義務はどうか、保健当局への報告はどうすべきか、また隔離義務がある場合はその要件(専用施設の有無、期間、症状による義務の差など)や費用は、といったところだろうか。また、当然ながら滞在場所への移動手段も確保しなければならない。

筆者の場合は現地関係者に多大なサポートをしてもらえたのだが、それがなかったとすると、陽性の結果がメールとSMSで通知された後は空港で1人きりとなり、これらすべてを自ら処理しなければならなかったものと思われる。陽性者であることが分かっているのにホテルが受け入れてくれるのかなど不安は想像するだけでも山ほどあり、旅行会社が適切なサポートを提供できれば高く評価されることは間違いない。

なお、宿泊施設についてのポイントは次項にまとめるが、空港からの移動についてはここで書き記しておく。利用したのは通常のタクシーだったのだが、ドライバーには筆者が陽性者であると伝えていたため日本で言えば11月くらいの夜なのに前後左右の窓4枚すべてを全開にして高速道路をかっ飛ばされ、さらにこちらは暖かい日本に帰るつもりの服装であったので身体が冷え切ってしまった。これで体調を崩す場合もあり得るので、重ね着するなど注意や対策が必要かもしれない。

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