食品廃棄物が国内外で社会問題として注目されるなか、旅行観光産業での取り組みを求める声も高まっており、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)などは環境保全や倫理上の問題としてだけではなく経営を圧迫するコストとして捉えて取り組むよう訴えている。
米Travel Weeklyによると、ホテルやクルーズ、カジノなどのビュッフェやケータリングは食品廃棄物の大きな発生源で、ある調査では典型的なホテルの食品廃棄物の53%はビュッフェなどでの「作りすぎ」が原因との結果もあるとのこと。そして食材の値上がりもあり、ホテルが食品廃棄物の削減に1ドルを投じると平均して事業費を7%削減することが可能という。
また航空業界でも、国際航空運送協会(IATA)は年間で40億ドル相当の食料や飲料が廃棄されていると試算。食品が媒介する感染症への懸念から提供されなかった機内食の転用は制限されているが、IATAはリスクは僅少であるとして各国政府に対しロビー活動も展開中だ。
航空会社では、例えば日本航空も機内食を事前に不要とするオプションを導入が、スイスインターナショナルエアラインズも1日の最終便で残った機内食を割安な料金で持ち帰ることができる仕組みを昨春に導入。8ヶ月間で1.9万食を販売した。また値引きや選択可能なメニューの増加によってエコノミークラス機内食の事前注文を促進する施策も実施している。
こうした取り組みはサプライヤー側にのみ留まるものではなく、英Travel Weeklyによると英国のeasyJetの旅行部門であるeasyJet holidaysは契約ホテルによる食品廃棄物の削減をAIを活用して支援する試みを発表。
サステナビリティについてのオックスフォード大学との共同プロジェクトの成果として始めるもので、事前の調査ではスペインのテネリフェ島全体で発生する食品廃棄物の18%が宿泊施設からと判明しているとのこと。
開発業者であるWinnowによるツールはカメラでキッチンの様子を撮影して分析するもので、平均すると12ヶ月から18ヶ月の間に廃棄量を半減でき、さらに食材の調達費用も2%から8%削減できるという。
なお、TRVLWIREはこのほかでもカーニバルコーポレーションの取り組みや太平洋アジア観光協会(PATA)によるプロジェクト、イベロスターグループによるAI技術導入などについても取り上げてきている。