日本に比べてサステナビリティへの取り組みが進んでいる印象の海外の旅行観光産業だが、それでも不十分との声が高まっている。
英Travel Weeklyによると、英国旅行業協会(ABTA)のCEOは気候変動と脱炭素についてより真剣に取り組むべきと強調。「持続可能性を致命的に重要なものと捉え、より素早く行動する必要がある」と警告し、さもなければ政府によって旅行に環境税が課されたり消費者の間で「旅行は良くないこと」であるとの認識が広がったりしかねないとの危機感を示した。
またPhocusWireによると、HotelbedsのCEOも旅行を持続可能なものとしなければならない点は「交渉の余地のない」ものであると発言。環境に限らずすべての企業活動においてエシカルであることが企業の成功の前提になるとしている。
企業や団体による取り組みも積極的に進められており、TTG Asiaによると国際航空運送協会(IATA)は2050年までにネットゼロを実現するためのロードマップを公開。またIATAはATPCOと共同でフライトによる二酸化炭素排出量のデータをAPI経由で提供可能とすることも発表している。
排出量については、排出量を推計するフレームワークをGoogleとEUの欧州航空安全機関(EASA)が共同で構築する計画も始まっており、ルフトハンザグループが初期パートナーとして協力している。
このほか、PhocusWireによるとUberは欧州と北米で2030年までに、全世界では2040年までに排出量ゼロを実現する目標を掲げており、昨年だけで電気自動車の数を3倍に増加。バッテリー残量と電気代、需要、交通量などの要素をもとに充電に最適なタイミングを提案するテクノロジーや、利用者側が二酸化炭素排出量を削減できる仕組みなども開発している。
さらに意外なところではアマデウスがSAF(持続可能な航空燃料)の原料となる合成ガスを生産するドイツ企業の株を取得。業界全体のネットゼロ化への流れのなかで自社の存在感を高めようとしている。
業務渡航の世界では、出張の低炭素化に真剣に取り組まない企業は優れた人員の確保が難しくなるとの調査も。英国で1000人の出張者を対象に実施されたもので、53%が低炭素の選択肢を用意している企業を優先すると答えたという。
なお、クルーズ業界では最近フッティルーテンが初となる「排出量ゼロ船」を発表。世界で最もエネルギー効率の高いクルーズ船を目指すという。