アメリカン航空が4月にNDC体制への移行を強行してから3ヶ月。旅行業系メディアでは、当初は多く見られた旅行会社からの反発を中心とした記事が下火となった一方、最近ではGDS各社の状況やTMC大手の決断に関する記事が増加している。

Travel Industry Wireが掲載したのはアマデウスの寄稿で、2023年にNDCについて知っておくべきポイント9点としてNDCを優先事項として取り組むべき理由やアマデウスの対応状況などについて説明。

NDCの進歩を待たずに今取り組むべき理由としては、そもそも消費者がNetflixやSpotify、Amazonなどの企業から当然のようにパーソナライズされたコンテンツを日々提示されているなかで旅行分野でそれを否定する理由はないとしたうえで、NDCが現時点では発展途上であることについては「もしテスラのようなメーカーが400マイル(約640km)走行可能なバッテリーと50マイルごとの充電設備が整うまで待っていたら電気自動車は今のように普及していない」として先行者利益にも触れている。

同様にWeb in TravelはセーバーのEVP/CCOへの取材記事を掲載。NDCへの向き合い方についてはビル・ゲイツ氏の言葉を引用して「人々は次の2年間の変化について過大評価し、10年間の変化は過小評価する」として様子見モードは危険と指摘しており、NDCの発展速度が急激に速くなることはないとしつつ、まずはNDCの活用を決断し自社にとって最も素早く最も合理的な道筋を見つけるべきなどと訴えている。

これに対してTMC側では、アメリカンエキスプレス・グローバルビジネストラベル(Amex GBT)が6月5日に自社の「Amex GBTマーケットプレイス」にNDCコンテンツを導入するために航空会社やGDS、OBTの開発企業などが解決しなくてはならない162の課題を発表。本来は標準化された統一規格であるはずのNDCが航空会社によって異なる仕様となり、例えば片道での検索やオープンジョーの検索ができなかったり、共同運航のマーケティング航空会社を区別できなかったり支払い済みの航空券をキャンセル・VOID処理できなかったり、といった問題が列挙されている

一方、同じくTMCのCWTはコンカーの創業者も関わる業務渡航系スタートアップのSpotnanaとの提携を決定。Spotnanaは自らTMCとしてのサービスを提供しつつ、「Travel-as-a-Service」を旗印にOBTやブッキングエンジン、予約記録の管理システムなどをクラウドベースで包括的に提供する企業で、CWTはNDCを含めた包括的なテクノロジーの活用を目指している。

そのSpotnanaは最近、ユナイテッド航空とのNDCの直接接続を発表。BUSINESS TRAVEL NEWSによると、従来のGDSやアグリゲーターのアプローチがNDCコンテンツを集約してTMCに届けることを中心としていたのに対し、Spotnanaは「予約ツールからサービシング、バックエンドのプロセスまですべてを含むエンド・ツー・エンドのソリューション」であり、例えば旅行者のロイヤリティ・ステータスを登録して上級会員にはシートマップをもとに座席の無料アップグレードなどの特典を予約することも可能となるとのこと。

ユナイテッド航空のVPは「GDSやアグリゲーターを通じてNDCコンテンツを利用している企業が、Spotnanaのサービシング機能に追いつくには、これまでのペースだと少なくとも2年はかかる」ともコメント。他社が3年かけた開発を3ヶ月で終えたという。

SpotnanaのテクノロジーはGDSに依存していないため、ある意味ではGDSがボトルネックとなり得る流通の構造を変革する可能性も秘めている。Spotnanaの創業CEOは記事中で、直接接続によってGDSへの支払いを削減できれば航空会社との間でアップグレードや変更手数料などについて新たな交渉が可能となるとコメントしている。

(※2023年7月7日08時33分追記:the Company Dimeによると、GBTも現在GDSに依存しないビジネスモデルの可能性を探っているとのこと。)

なお、このほか細かな話題ではアメリカン航空のEDIFACTベースで発券された航空券をNDCで再発行するツールをAccelyaが開発したり、SAPコンカーがアメリカン航空とユナイテッド航空についてセーバー経由で年内にNDC対応を完了すると発表。来年第1四半期にはアマデウスでも対応する。