引越しを控えており、色々と物を処分している。メルカリなどのフリマアプリでは、思わぬ高値で売れることがある一方、手間暇や送料を考えるとことわざとは逆に「得して損取る」ことになるような場合もある。
ただ、「こんなことならすべてまとめて不用品回収業者に頼めば良かったか」と思いつつも、まだ問題なく使えるものをゴミとして出すことへの倫理的な抵抗も大きく、バランスを考えながら作業を進めている。
送料をかけるほどの値段は見込めないけれども捨てるのはしのびない、といったものは、ジモティーに無料または低額で出品すると結構な確率で貰い手が付き、自宅近くの指定場所まで取りに来てくれる。粗大ごみで出したいのに枠が埋まっていて困っていたものも売れて助かった。
ちなみにこうしたサービスに対しては、「民度が低い」「泥棒市」そして「デジタルスラム」といった評価がされることがある。確かに実際に使っていると異様さを感じる場面はあり、せっかくSDGs的意識でリユースしてもらおうと思って提供しているのに無責任に不法投棄でもされては意味がないので、譲渡先の選定には気を使う。
まあ実生活でもこちらの思う常識が通じない相手はいるわけで、注意しながら使うのが正解だと思うのだが、ちょうどそんなことを考えていたら嫌な記事を目にした。東京の街がスラム化していくという話だ。
結局は自分が時流をどう読んで最終的にどう死にたいかを考えて行動していくしかないし、センセーショナルな書きぶりにいちいち反応しても仕方ないとはいえ、コロナ禍で業界全体についても未来への自信を失っているなかでは堪えてしまう。
堪えたといえば、旧知の業界内の起業家から今週久しぶりに電話があったと思ったら、手詰まり感にさいなまれていると聞かされた。無礼を承知で言えば非現実的と感じられるほどの目標を公言し、常に数百%の努力を続けてコロナ禍でも果敢に畑違いの分野を含めチャレンジしてきている人物で、まさかそんな弱気な発言が出るとは想像もできなかっただけに衝撃が大きい。
諸外国の例を見ても、出入国に青信号が灯れば消費者が動くことは間違いなく、したがって我々が考えなければならないのはいかに信号の色を変えるかだ。日本経済団体連合会(経団連)の部長もトラベル懇話会の新春講演会で「意味のない自粛をやめよう」「国の扉をこじ開けよう」と呼びかけたらしい。
それは我々旅行観光産業の総意でもあるはずだが、その実現に向けて我々はただ国に対し心のなかで期待するだけでなく、世間に対し主張していかなければならない。スラム化を避けるためにもより積極的な海外との往来は不可欠。日本旅行業協会(JATA)あたりがやってくれればと思いながらほったらかしていたアイディアもあり、引越し準備の最中ではあるが、ひとつ挑戦してみようかと思っている。(松本)