PhocusWire英Travel Weeklyによると、Travel Foundationはオランダの観光当局や大学と共同でレポートを発表し、2030年に二酸化炭素の排出量を半減して2050年にネットゼロを実現する目標を旅行観光産業が達成するには長距離フライトの制限など抜本的な対策が不可欠と指摘した。

「行動を長く遅らせ続けてしまった結果、選択肢はもはや限られている」とし、現在予測されているような成長曲線を維持しながら環境負荷を十分に低減することは不可能と指摘。そのうえで即座に強調して行動を変化する必要があるとしている。

具体的には、既存/未知のテクノロジーやオフセットがなんとかしてくれると言うような盲目的期待をもとにした楽観的戦略は捨てなければならず、選択可能な道は「全世界の旅行観光産業が等しく影響を受ける全体的な旅行制限」か「鉄道や電気自動車によるネットゼロの旅行を優先し最も環境負荷の高い長距離路線を削減する」かのいずれかとのこと。

後者については、航空会社のみを非難しようとしているわけでではなくSAF(持続可能な航空燃料)の安定供給や機材の更新に時間がかかるとの見立てによるものだが、現状のままでは2050年の段階で往復合計で1万マイルを超える長距離の飛行は、回数では航空市場全体のたった4%でしかないにも関わらず排出量は旅行観光産業全体の40%を占める。

長距離路線の制限については、2019年の水準に留めた上で航空券に環境税を課し、その資金を研究開発や鉄道などへのシフト促進に投じるよう提言。航空運賃は2030年までに2019年比で60%ほど値上がりし、さらに2050年には3倍へと上昇すると想定。それでもなお産業としての成長は可能という。

この結果に対して、観光局のほかエクスペディアなどの企業も支持を表明。一部の関係者は、痛みを伴う選択肢であってもコロナ的な完全閉鎖よりはましだと評価しているという。

なお、「盲目的期待をもとにした楽観的戦略」関連ではグリーンウォッシュの問題も顕在化してきており、英Travel Weeklyによると最近でもルフトハンザの広告について英国の広告基準協議会から物言いを付けられている。