往来再開とともに各国で旅行観光産業に恩恵をもたらしてきたリベンジ旅行の需要あるいは累積需要(pent-up demand)。これまでは各種の調査でもインフレや景気後退への懸念があっても消費者は旅行への支出を優先しているとの内容が主流で勢いの衰えを指摘する声は見られなかったが、ここにきて異なる論調の記事が業界メディアに登場しはじめている。

米Travel Weeklyは5月22日に公開した記事でバンク・オブ・アメリカとマスターカードがそれぞれ発表したレポートを紹介し、このうち前者では4月の旅行関連のカード決済額が前年比1%増となって前年の27%増から急減速したことを指摘。旅行以外を含めた全体は1.2%減と2021年2月以来の前年割れとなっており旅行はむしろ好調な分野ではあるものの、勢いの衰えの兆候はあるとしている。

具体的には、リカバリーが先行していた国内旅行などが伸び悩んでいる一方、戻りの遅かったクルーズや海外旅行は好調を維持。同様に客層でも、回復の遅かったシニア層は堅調で逆にこれまで牽引してきた若者たちは勢いを失っているという。

また、マスターカードのレポートを担当したチーフエコノミストは、そもそも累積需要は本質的に一時的なものであるとしたうえで、旅行は依然として好調でありつつ今後も継続できるかは雇用や賃金の変動次第では大きく左右される可能性があると分析。旅行費用増加の影響や「モノからコト」への変化についても指摘されている。

このほか、BUSINESS TRAVEL NEWSは5月22日の記事でPwCの予想を紹介。これまで回復を牽引してきたレジャー需要が軟調になるもののそれに代わって出張や団体旅行が米国のホスピタリティ産業の回復を支えるようになるとした。

現状としては、昨年11月の予想よりも減速しているものの引き続き期待を上回るパフォーマンスが続いているとの分析で、今年の通年での稼働率は前年比1.3ポイント増、前回予想からは0.2ポイント減の63.4%と予想した。

一方、デロイトによる米国のレジャー旅行市場についての調査では、経済面での不安感も根強いものの、夏の旅行を計画している割合や国際線の利用意向が前年を上回るなど需要は引き続き好調であるとしている。