アメリカン航空(AA)は米国で昨年12月に旅行会社に対し、4月までにNDC接続を完了しなければそれまでに販売できていた運賃の40%以上を利用不可能とすると通告したが、期限が迫るなかでその強硬姿勢の成否に注目が集まっている。
強硬姿勢の表れとして見られているのが営業体制の変化で、今年1月にはスターウッド出身で旅行会社経由の営業に力を入れていたCCOのアリソン・テイラー氏の退任を発表。2月にも北米の営業体制を見直したことが報じられていた。
この結果、米Travel Weeklyが3月16日に公開した記事では、「過去数年間やり取りをしていた担当者が全員いなくなった。誰も残っていない」などとAAによるカスタマーサービスの削減を旅行会社やTMCが報告しており、顧客へのサービスにも影響が生じているとのこと。記事中ではCEOが直販へのシフトに力を入れていることを明言する様子も触れられている。
またNDC対応の強制についても、米国トラベルアドバイザー協会(ASTA)がここにきて年末までの延期を要請。NDC体制への移行準備が整っているとのAAの主張は誇大であり説明も不足していると批判しているもので、米運輸省(DOT)による調査も求めているとのこと。
航空系ブログのCranky Flierでは、これらの背景について経営幹部のパワーバランスなどから分析するとともに、状況の推移を詳細に説明する記事を公開。
こうした記事を総合すると、AAは「TMCが扱ってきたような純粋な業務渡航がコロナ禍で減少し自主手配の出張やブレジャー/ワーケーションが増加している」「競争力の高い路線網があれば“売りやすいかどうか”は関係ない」と判断している模様。
Cranky Flierでは、こうした戦略についてリスクがあると指摘し過去に多くの航空会社が繰り返してきた失敗を逃れられるかどうかは不透明としつつ、AAが成功すればデルタやユナイテッドも追随すると予測。一方、AAをよそ目に他社が法人需要のシェア拡大を目指すことも容易に想像され、また旺盛なリベンジ需要が今後解消されていくなかで同じように強気を保ち続けられるかと疑問を呈する声も見られている。