ChatGPTに代表される生成AIが注目を集め、日本でもビジネスへの活用方法について日々多くの記事が公開されているが、海外では旅行観光産業での注目も日本を大きく超えて高まっているようだ。
TRVLWIREでもこれまでに旅程作成系のアプリをまとめたり、観光マーケティングでの活用事例を紹介したりと折に触れて取り上げてきたが、最近はまるで追いつかない状況。そこで今日はここしばらくの間に公開された主なAI関連の記事をまとめておく。
具体的な活用事例では、Pricelineがチャットボット「Penny」を発表。PhocusWireによると、ChatGPTだけでなくGoogleの生成AIも活用しているのが特徴で、好みにあったホテルの推薦や24時間対応のカスタマーサービスといった機能を提供し、さらにセキュリティを確保したうえでチャット経由でクレジットカード情報を受け取って予約まで完了することができるという。
また、Skiftによると、インドのOTA、IxigoもChatGPTで旅程作成ツール「Plan by Ixigo」を開発。リアルタイムで現地の情報を反映し、地図上に旅程をマッピングする機能も。天候や大気汚染状況も反映。「人間が何日も検索を繰り返して作成する旅程を数秒内で生成する」ことを最終目標としている。
さらにTRAVOLUTIONによると、HotelRunnerはホテルがオンライン上に投稿された口コミを把握しそれに対する回答を自動生成するレピュテーションマネジメントのツールを公開。133の言語への自動翻訳にも対応している。ちなみに、AIを活用したレピュテーションマネジメントについては、TrustYouもその重要性を強調しているところだ。
(2023年7月20日09時57分追記:The Guardianは7月15日、ChatGPTに偽の口コミを書かせる実験の結果とともに、すでに多くのホテルに対してそうした口コミが投稿されている実情を紹介する記事を公開。)
このほか、欧州のB2BテクノロジープロバイダであるTravel CompositorはAIでユーザーの希望に応じた旅行パッケージを生成し予約、決済まで完了するブッキングエンジンを開発。またワンワールドも世界一周航空券の手配にAIを活用している。
(※2023年7月19日23時23分追記:PhocusWireによると、新たにTripadvisorもOpenAIの生成AIによる旅程作成ツールを発表。)
(2023年7月20日09時50分追記:Skiftによると、TuiもChatGPTによるチャットボットを英市場向けアプリで初導入。記事では非OTAによる取り組みの先行事例となると指摘するとともに、Tuiが今後も生成AIを会社全体で活用していく方針も記している。)
PhocusWireはこれ以外でも、Amex GBT、Flight Centre Travel Group、Skyscanner、バケーションレンタルのメタサーチHomeToGo、短期賃貸向けテクノロジー開発のHostfullyについても、それぞれ生成AIに対する取り組みの現状を紹介している。
また、ホテル業界でも価格戦略の改善への期待が示されているほか、比較的小規模なホテル企業でもChatGPTの利用有無で成績に大きな変化が出ているとの報告も出てきているところだ。
一方、旅行観光産業に対して生成AIが持つ影響力についての総論的な議論も続いている。例えばTTGは「すべての旅行関連企業は早かれ遅かれAIによる影響を受ける。我々はAIが得意とする“ルールとデータによって成り立つ産業”であることを理解しなければならない」などとする専門家の意見を紹介。さもなければ簡単に餌食になっていくとも警告しており、特に中堅旅行会社はテクノロジー開発で大手に遅れを取り、顧客との結びつきの強さでは小規模の旅行会社に勝てないためにリスクが高いと指摘している。
また、MicrosoftやAmazonといった企業も当然ながら生成AIは旅行観光産業を大きく変革し得るとの立場で、例えばAmazonは、Skiftによると旅行関連企業が顧客サービスを「ハイパーパーソナライズ」することをAIが可能にし、早ければ来年にも変化が見えると予測。業界内の経営層の86%がAIの価値を認めていながら本格的にAIを活用できているのは15%に留まるものの、ハイアットが数年前に取り組みを始めて最初の6ヶ月だけで4000万ドルの増収を実現するなど、即効性も高いという。
Microsoftについては、Trip.com、Kayakの幹部とともに業界イベントのパネルディスカッションに登壇した様子をPhocusWireが紹介。ここでもハイパーパーソナライゼーションが話題として出ている。
ちなみにTrip.comは他社に先駆けてChatGPTベースのチャットボット「TripGen」を今年2月に稼働。利用は順調といい、同社のEMEA担当GMはTTGに対し「OTAは伝統的旅行会社による路面店を通した顧客へのアプローチを、テクノロジーを開発してダイナミックに実現することを目指しているが、AIはこれを加速し次のレベルに引き上げる」と予測した。
このほか、アマデウスの幹部はPhocusWireやHotel News Resourceへの寄稿で旅行業界がChatGPTをリスクを避けながら有効活用する方法について説明している。
こうした大手を中心とした開発競争の激化の先については、市場調査会社のEuromonitorが旅行の計画・購入段階のみならず消費者の日常生活や仕事の場面でも生成AIがますます浸透していくと予想。ただし、最終的には旅行やホスピタリティの「ヒューマンタッチ」な側面が勝敗を分けるとも分析している。
また、当然ながら生成AIが持つリスクについての疑念も残っており、PhocusWireは業務渡航の分野における懸念や取り組みへの積極性を分析する記事も公開。またHotel News Resourceは情報格差(デジタル・デバイド)ならぬ「アルゴリズム・デバイド」の問題に目を向け、AIを活用していく上での注意点も紹介している。
AVA TravelさんもAIトラベルを取り組んでいるみたいですね。
ユニバーサルツーリズムやコレクションなどを集める旅でも
AI旅行は今後旅行業界でも主流になっていくのかなと思います。