2261、2144、1279、1067、2817、1724、409。これらの数字が何かというと、NHKのデータから今年1月から7月まで毎月のコロナによる死者数を集計してみたもので、8月も26日までで616人となっており(おそらくワクチンの効果による)減少傾向は明らかでしょう。

たしかに、同じ期間の感染者数に目を向けると15万4988人、4万1896人、4万2450人、11万7702人、15万3737人、5万3109人、12万6608人、46万6680人(~8月26日)となっており、8月の増え方は前月比3.7倍と強烈です。

しかし、8月の死者数が7月に比べて1.5倍に留まっているのも事実です。8月の死者数は、このままいけば昨年12月以降で2番目に少なくなりそう(最少は7月)ですし、感染者数に占める死者数の割合も0.13%でコロナ禍が始まった昨年2月以降のどの月よりも低い数値となっています。

もちろん感染者が増えればそれだけ医療機関への負担が増すのも当然で、友人の医師によるソーシャルメディアへの投稿はだんだんと余裕が失われており、悲痛な叫びの色合いが濃くなってきています。しかし、都内の中規模の病院で勤める私の妻は、コロナと直接関係のない部署だからということもありそうですが、以前と変わらない多忙さはあっても医療崩壊といった言葉で表現されるような状況にはないようです。

こうして相反する印象の情報を並べてみた時に、一つの疑問が頭に浮かびます。「我々は一体何を恐れ、何と戦っているのか」と。あるいは「なんでこんなことになってしまっているのか」と。

そんなことを考えていると腹が立ってくるのは一般メディアの姿勢で、テレビは「悪い方」にしか光を当てず、「懸命な訪問看護もむなしく自宅で亡くなった患者」や「後遺症に苦しむ若者」といった話にばかり時間を割き、上述のような客観的データの定量分析はほとんど見られません。そうした姿勢が世論を少なからず左右していることは間違いないでしょう。

「◯◯が過去最悪」と取り上げるなら、なぜその◯◯が改善した時に同じだけの熱量(半分でも)でそれを報じないのでしょうか。なぜその代わりにより悪くなった数字や事柄を探して引っ張ってくるのでしょうか。

私も情報を生業としており、とにかくなんでも公平になどというつもりはありません。単純に不可能だからで、限られた時間の中で伝えるべきと考えることに力を注げば良いと思っています。

しかし、そうであればこそ透明性や一貫性が不可欠で、なぜこの内容、この判断だったのかという問いに対して、胸を張って答えられるものがなくてはなりません。こんな話はメディア云々以前に社会人としての基本であるわけですが、コロナ禍に関する情報発信に携わっている皆さんは説得力のある答えを持ち合わせておられるのでしょうか。

また、例えば日本の交通事故の死亡者数は毎月200名前後で、7月でいえばコロナの死亡者の半分程度もあるわけですが、仮に車の事故で400人が亡くなったとして「未曾有の~」などと煽ることはあるでしょうか。逆に「未曾有のコロナ禍」が正しいとして、その半分も人を殺し続けている車について利用を控えるべきという話にならないのはなぜでしょうか。

死という観点で言うと、日本における今年の自殺者は7月までのデータで月平均1779人、1日あたりだと59人もいます。また、少子高齢化により日本人の数は12ヶ月で51万人減少しており、1日あたり1397人も減っていることになります。1日あたり20~30人程度の新型コロナウィルスは、この期に及んで社会にダメージを与えながら大騒ぎをし続けるべき話題なのでしょうか。

私も素人ですから、最初に列挙したようなデータに対して「印象」を語るしかできませんが、本当に恐れおののき、行動を慎み続ける必要があるのであれば、客観的かつ合理的にそう説明してもらわなければ納得しようがありません。(松本)