木曜日に2回目のワクチン接種を完了しました。抗体ができるまでにまだ時間がかかりますが、もう少しすれば「ワクチン接種済み」のお墨付きが得られ、国によっては入国時の隔離が免除されるようになるということで、大変うれしく思います。
人によっては抗体値が十分に高くならないという話もあるようで、そうなると結構な肩の痛みを我慢したのに、という思いはしてきますが、こと旅行の世界においては今のところ抗体値ではなく接種したという事実のみが重要ですので関係ありません。早く海外に行ける日が来るのを待ち遠しく思います。
最近は、周囲でも接種完了の報告を聞く機会が増えてきているところで、これも嬉しい兆候です。もちろん、先程の抗体値の話だけでなく、追加の接種が必要になりそうだとか変異株の猛威だとかネガティブな情報はあり気持ちとしては一進一退ですが、一方で鼻で吸うタイプの経鼻ワクチンや治療薬の開発が進んでいるという話もあります。
これは言い切って構わないはずですが、最終的に新型コロナウィルスが季節性のインフルエンザのようにエンデミック(風土病)化することは間違いありません。もし否定される方がいれば是非ご意見をお聞きしたいところですが、治療薬ができても根絶はできないのでしょうし、この1年半ちょっとの苦しい状況をこの先何年も続けていけるはずもありません。少なくとも私はそんなに我慢が続きません。
問題はそれがいつかが分からないことですが、こればかりはどうしようもなく、我々ができるのは個々人や企業、業界として声を上げることです。
私はこのコロナ禍で、世界の旅行観光産業の動きを幅広く観察してきたわけですが、日本の旅行業界に足りないのは発信力だと感じています。諸外国では「苦しんでいる」「助けが必要だ」という主張が強いトーンでなされ、業界誌などを通して発信されます。自分のことを強く言い立てるのはエゴイスティックであり、日本で美徳とされる調和や忍耐と相容れないのかもしれませんが、そうした美徳が意味を持つのは、我慢さえしていれば全体最適が実現する場合だけです。
その意味では、古巣のトラベルビジョンがJATAに対して公開質問状を出したのは、澱のように溜まってきた不満の表出であり新鮮でした。私はこれまでこうした踏み込んだコンテンツを作り出したことはなく、他の業界誌でも見た記憶はありません。
とはいえ、こうした状況下で旅行業のコミュニティ内でやりあっていても何も変わらないだろうなとも思います。業界の構造的な課題である中小と大手の隔たりが急に埋まるはずはなく、また多少改善されるとしてもその頃にはコロナ禍もかなり先に進んでしまっているでしょう。
今回示された生々しい不満が解消されない時にはコロナ後に分裂を含め思い切った判断をすればいいと思いますが、今重要なのはそんなことよりも、既存の枠組みにこだわらずに国や世論をどうしたら動かせるかを考えムーブメントを作っていくことです。
例えば、英国では旅行業界メディアTTGが「#SaveTravel」「#SaveTravelJobs」キャンペーンを立ち上げ、ボリス・ジョンソン首相らに対して経済支援などを求める公開書簡に1万筆以上の署名を集めたり、Twitterにメッセージを同時に投稿する「ツイートストーム」を展開したりしています。
また、企業単位でも主張が活発で、別の業界誌BUSINESS TRAVEL NEWS EUROPEでは業務渡航系旅行会社のCEOが「運輸長官は業務渡航業界を理解していない」と公然と非難しており、あるいは国や自治体を相手にした訴訟もあちこちであります。
日本では団体や企業など組織単位だと色々な思惑やしがらみで動きにくいかもしれませんが、事態は急を要します。コロナ禍にあえぐ旅行観光産業関係者一人ひとりの単位であれば連帯は格段に容易であるはずで、オンライン署名などのツールもあります。例えば業界メディアが連携して横断的に読者に働きかけるようなことは可能であるはずで、私としてもなにかできることを考えたいと思っています。(松本)