ChatGPTが公開されてから10ヶ月近くが経過したが、旅行観光産業におけるAIの活用はますます盛んになっている。4月にも様々な活用事例をまとめたが、現在もまったく勢いは衰え知らずだ。

直近ではAmadeusとMicrosoftとAccentureが共同で出張者向けAIデジタルアシスタントの試験運用を開始。AmadeusのCytric EasyとMicrosoft Teamsの経費精算プラットフォームにChatGPTを組み合わせて、自然言語によるチャットを通して業務渡航に関わる複雑なタスクを完結できるようにする狙い。

具体的には、計画や予約、管理などについて会話形式で最も適切な選択肢を提示したり詳細の説明を求めたりすることも可能。企業の規定を遵守して効率向上やコスト削減を追求しつつ出張者の好みにも対応していく。

また、「世界一のAI旅行アプリ」を目指しているExpediaグループも着実に目標に向けて開発を進めている様子。PhocusWireによると、ExpediaだけでなくHotels.comやVrboの個別アプリでChatGPTによるチャットボットを導入。客室のWiFi強度がどうか、プールでタオルが提供されるかといったな宿泊施設についての質問に対して施設情報や宿泊客の口コミをもとにAIが回答する機能を設けた。

また、旅行先の情報を提供する「ダイナミックトラベルガイド」機能も開発。希望者限定で最新機能のベータ版も提供し、米国におけるiOSのExpediaアプリのみで生成AIが旅程を提案する機能も利用可能としている。さらに、消費者だけでなく対取引先でも、宿泊施設の増収に繋がる提案をする機能も強化している。

なお、Expediaではインフルエンサーによる旅行需要の喚起能力に注目が高まるなかで、インフルエンサーと組んで短時間のTikTok的映像コンテンツを集めて米国のExpediaとHotels.comのアプリに組み込む取り組みも開始。このインフルエンサーやSITなど「パッション」をベースとした旅行流通も大きなトレンドと言える。

一方、ChatGPTの対抗馬の一つであるGoogleのBardも旅行関連の機能を強化中。Bardを通してGoogleのフライト検索やホテル検索の情報をリアルタイムで利用でき、さらにGmailやDocs、ドライブ、マップ、YouTubeなどの情報も汎用的に活用できるようになった。例えばBardにホテルのコンファメーションメールを探させ、そのホテルの近くのレストランを提案させるようなことができるという。

同様にMicrosoftもWindows11の「Copilot」機能を強化し、旅行先で訪れたいスポットのリストをCopilotのウィンドウにコピー&ペーストすることで各スポットの概要とともにそれぞれの間を歩く距離や時間を知ることができたり、登録したスマートフォンから搭乗予定のフライト情報を取得してその最新情報を入手したり空港への移動を手助けしたりすることができるようになった。

「アプリで生成AIを試験運用」程度ではもはや何の目新しさもないような状態ではあるものの、老舗旅行会社でもTuiが英国でChatGPTや他の大規模言語モデル(LLM)をテスト中。一方、PhocusWireによると、Klookは「K.AI(Klook AI)」と名付けたチャットボット兼トリッププランナーを8言語で正式稼働すると発表。今後の課題はキャンセルや変更など予約後の対応という。

このほか、生成AIに着目したスタートアップも次々に登場しているところ。上掲の4月の記事でもGuideGeekやiplan.ai、AMBLR、Roam Around、TRAVELMOJI、Tripnotes、Vacay Chatbot、Curiosio、Roamrを紹介し、当時から細分化の傾向が見られると伝えていたが、Skiftによると新たにTroupeGenixGPTCharterGPTが登場。Troupeはグループ旅行での民泊探し、GenixGPTは「hidden gems(隠された宝石)」と表現されるような主流でないデスティネーション、そしてCharterGPTはプライベートジェットの利用に特化。

一方、カーニバルクルーズラインやWeWork、Nikeなどの元幹部が立ち上げたTangoはマス富裕層または大衆富裕層(mass affluent)にターゲットをしている。

また、スタートアップ関連では資金調達も続いており、PhocusWireによると旅程計画のMindTripは700万ドルを調達したという。