近所で衆院選の候補者が文字通り「絶叫」していた。本当に不愉快極まりなく、そっくり録音してその人物の家か事務所の前で同じ音量で流してやりたいと思うほどだった。サービス業で最も重要なのは相手の心情を察知する想像力や共感力だと思うが、自分がされて嫌なことを他人に平気でするような人物が民に寄り添うまともな政治などできるはずがない。

選挙といえば、ウィズコロナへの転換でこれだけ世界に遅れを取っている現政権と自民党に投票する気にはなれないのに、野党もなんとも不甲斐ない。自民党をサポートするのが目的ではないかと思うくらいズレまくったことを主張していて、絶望的な気分になってくる。

一昨日、緊急事態宣言中ずっと律儀に営業を自粛していたいきつけの居酒屋に行ったのだが、随分と賑わっていた。店内の雰囲気は、カウンターのアクリル板以外は以前とほとんど変わらず、飲んでいたらコロナ禍を一瞬忘れたほど。他の店々も客足が戻っている様子で、酒を愛する一人として嬉しい限りだった。

ただ、旅行観光産業に身を置く者としては悔しさ、腹立たしさも覚える。何度も書いているが、海外旅行、訪日旅行の世界では未だ売れるものがほぼないのだ。世界では、観光依存の高い国だけでなくいわゆる先進国も先を急いで入国制限を緩和しているところで、その中で日本は14日間を10日間にしたと進展のように言われても呆れや焦りしか感じない。

そもそも、観光目的はおろか留学生や技能実習生が37万人も来日できていないという話もあり、「G7で唯一外国人留学生にビザを出していない」という指摘は、考えると情けなくなってくる。

観光マーケティングはその国のファンを増やす仕事だが、来たいと切望してくれていて来てもらうべき理由もはっきりしている人々すら断っているようでは話にならない。ワクチンが完成していなかった昨年のうちならまだ分かるが、今は溜まりに溜まった旅行需要の争奪戦が始まっているのだ。例えばタイ国政府観光庁は、すでに日本でも「隔離措置なしで旅行可能」と明確なメッセージを打ち出してプロモーションを開始している。


どうして日本で旅行観光産業はこうも軽んじられるのか。英語では、議会や取締役会などに占める女性や非白人の比率が実際よりも低いと「under-represented」、つまり声が代弁されていないと評されるが、この産業も日本において十分代弁されているとは到底言えないだろう。

共産党はポスターで「居酒屋の灯を消すな」と書いたが、大変な思いをしているのは飲食店だけではない。(松本)