米国のモンタナ州が利用を全面的に禁止する州法が成立したとして日本でも盛んに報じられたTikTokだが、旅行や観光のマーケティングでは引き続き重要な役割を担っている模様。

モンタナの州法が成立したのは5月17日でアプリストアでの配信が禁止されるのは1月1日からだが、州内の地域観光当局でもVisit Big Sky、Destination Missoula、Glacier Country Montanaの3団体は公式サイト上で公式TikTokアカウントへのリンクを現在でも掲出し、MissoulaとGlacier Countryのアカウントは6月にも投稿を継続。またフォロワー数が10万人を超えるまでに成長していたVisit Montanaのアカウントも削除はされず「一時的な停止」と案内されている。Skiftによると、Glacier Countryの社長兼CEOは様子見モードであると説明しているという。

他の州では州の職員と機関に公用デバイスでの使用が禁止されたことでアカウントを閉じた例もあるものの、カリフォルニア観光局は数日おきに投稿を続けるなどアクティブ。また、企業でもデルタ航空のアカウントはこの10ヶ月ほどでフォロワーを36万人弱から51万人へと増加。さらにユナイテッド航空は29.5万人を69.6万人としてデルタと順位を逆転している。

またCruise Hiveによると、ロイヤルカリビアンインターナショナルがアイルランドで調査を実施したところTikTokユーザーの80%が次の旅行先の選定をTikTokに委ねられると回答したとのこと。そして記事ではTikTokによる突発的な旅行意欲の高まりはクルーズ旅行と親和性が高いとも解説されている。

消費者の変化についてはChina Travel Newsも指摘。短編動画の台頭により旅行者は幅広い内容のコンテンツを素早く閲覧できるようになった一方で注意力は低下するといった変化が起きており、記事では旅行者がインスピレーションを得て旅を計画し目的地と関わる方法が破壊されたとしている。

China Travel Newsの別の記事では、中国版TikTokのDouyinで第1四半期に旅行関連の動画を視聴したユーザーが4億人を超え、旅行関連のコンテンツを投稿するユーザーの数も全業種の中で2番目に多くなっていることを紹介。ユーザー側、デスティネーション側の活用状況も説明されている。

さらに、TikTokの存在感はMICE業界でも大きくなっているようで、専門メディアのMeetings & Conventions AsiaはTikTokがビジネスイベント業界を変革する可能性を分析。イベント内容や舞台裏を顧客層に発信することに加え、参加者とイベントの最中だけでなく前後にもコミュニケーションを取ったり、会社や業界の働く場所としての魅力をアピールしたりするツールとしても評価されているという。

これ以外でも、英国ではクルーズ予約アプリがTikTokなどを活用することで急成長したり、旅行会社の人材採用戦略が大きく変化したりしているところ。