世界を席巻する生成AIが登場してからすでに1年以上が経過。当ブログでもこれまでに旅行観光産業での活用状況などについて取り上げてきたが、最近でも注目は高まり続けている。
PhocusWireによると、航空会社の多くがビジネスインテリジェンスとともにAIを2024年の重要な注力分野と回答。投資計画についてSITAが調査して発表したもので、ビジネスインテリジェンスに大規模な投資を計画していると回答した割合が73%で、AIも64%となったとのこと。
OTAや旅行会社の活用も続いており、最近の記事でもPricelineがプラットフォームの全域でAIチャットボットを導入する計画であることや、民泊プラットフォームのHomeToGoが全社レベルでのAI活用を計画していることなどが報じられているところ。
このうちPricelineのチャットボットは、もともとは昨年6月に導入したものでユーザーの好みなどに応じたホテルの提案機能などを備えていたが、原罪はフライトやレンタカー、パッケージ、さらに旅程の計画、予約、修正なども可能となっており、電話での問い合わせに比べて平均して10分近い所要時間の短縮に繋がっているという。PhocusWireはまた、Trip.comのAIバーチャルアシスタントの戦略についても伝えている。
そしてGoogleは、まずは米国限定ながらGoogle Mapsで自然言語による観光スポットなどの検索機能を発表。地図とAIの組み合わせが持つポテンシャルの大きさは昨年から注目されており、Lufthansa Innovation Hubも「All Great Journeys Start With a Map」と名付けたレポートを公開している。
このほか、スタートアップ企業の動きも変わらず活発で、例えばスイス発のTriplayは旅程作成にAIを活用。大小多くの会社が競合する分野だが、同社は興味関心に基づいた旅程を提案するだけでなく、ジオデータをもとにルートも最適化するという。またLaylaはAIによる旅程生成機能に強みを持つ同じくスタートアップのRoam Aroundを買収。LaylaはSkyscannerの共同創業者などから出資を受けている企業で、Tiktokなどのような短い動画やAIを活用してユーザーがデスティネーションを見つけて旅行を予約するサービスを提供している。
一方、最近はこうした具体的な施策についてだけでなく、すでに実行されてきた施策の結果についての報告も出てきはじめている。例えばホテル向けテクノロジー企業のD-Edge Hospitality Solutionsは、AIによるデジタル広告運用の成果についてレポートを発表。合計1.7万軒200万室以上の84のホテルチェーンを対象に調査したもので、AIは直販を増加してOTAに対抗する術になり得るとしている。
またPhocusWireはインドのOTAであるMakeMyTripのCTOにAIの取組状況を聞いたインタビュー記事を公開しているが、このなかでもAIを活用したユーザーがそれ以外と比べてコンバージョン率が高いことなどが報告されている。とはいえAIの能力が理想からは遠いレベルにあることも間違いなく、AIチャットボットの誤回答によってエア・カナダが賠償を認められる事態も起きている。
ちなみに、AIが幅を利かせる風潮に対してアイロニカルなマーケティング展開が選択される事例も。豪州のタスマニア州政府観光局は「TasmanAi」と名付けたキャンペーンを開始しており、画像生成AIのような仕組みに見せつつ実際には同州在住のアーティストが絵を描く内容としている。
なお、AI以外にもこの数年のテクノロジートレンドとして盛り上がりを見せていたVRやAR、メタバース、ブロックチェーン、NFTなどの分野でも現在もニュースは散見されている。ピアツーピアの民泊プラットフォームDTravelはすべての予約をNFT化し、ユーザーが宿泊できなくなった際に予約を第三者に譲渡できるようにし、物件オーナーもその販売益の一部をコミッションとして得られるようにした。
一方、スイス発のSleap.ioもWeb3、ブロックチェーンの技術を活用してホテル流通の変革を目指す。35万軒のホテルを予約可能で、200超の仮想通貨に対応しているという。