ロシアによるウクライナの侵略に対し、旅行観光産業からウクライナ市民への支援や抗議の動きが相次いでいる。

TTGによると、英国ではウィズエアーがウクライナの近隣国から出発する欧州便について、ウクライナを逃れた難民向けの無料航空券を設定。ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア発の便で3月末までに10万席を用意する。さらにその他路線でも難民救援用の特別運賃を提供する。

また、ユーロスターもロンドンのセントパンクラス駅までの移動を無償で提供。英政府は20万人以上のウクライナ難民の受け入れを決めたことを受けたもの。

宿泊業界でも難民受け入れの取り組みが始まっているところ。AirbnbもAirbnb.orgの難民支援基金とホストの自発的支援などにより最大10万人に無料で宿泊先を提供すると発表した。

これに対してOTA界隈では足並みは揃ってなく、SkiftによるとExpediaは(取り扱い自体は多くないものの)ロシア行き/ロシア発の旅行販売をすべて停止したが、Booking.comは日本時間3月3日8時30分現在でロシアのホテルが予約可能となっているほか、Googleもフライトやホテルのサービスを継続。

ツアー&アクティビティ予約のGetYourGuideは対象地域の体験を予約不可能にしている最中としつつも、Skiftの記事掲載時点では3月8日の「クレムリンと武器庫」のツアーが販売されていたとのこと。同様にAirbnbも、ロシアでの民泊や体験が予約可能となっていたという。

Tripadvisorは制限できないとの立場だが、ロシア政府の監視を逃れるため宿泊施設などのレビュー欄に書き込まれる反戦メッセージへの対応に苦慮。一方、ウクライナの国内外で影響を受けるウクライナ市民に対して食事を提供するWorld Central Kitchenの取り組みに、ユーザーとのマッチングファンド形式で最大25万ドルを寄付するとしている。

一方、Event Manager BlogによるとMICE見本市のIMEXフランクフルトは今年のイベントについてロシアの政府系企業による出展を拒否することを決定したという。

さらに、クルーズの寄港見直しやキャンセルも続いており、バイキングが年内のロシアのリバークルーズをすべて取りやめたほか、海のクルーズでも寄港を停止。寄港の取りやめはカーニバルやノルウェージャンMSCロイヤルカリビアンインターナショナルとセレブリティが続々と決定しているところで、travelmarket reportも情報をまとめている

このほか英国では旅行会社もツアーをキャンセルしているほか、難民支援を呼びかけつつ自ら取り組んだり影響を受ける近隣諸国の観光業支援に目を向ける話題も出ているところ。Gアドベンチャーズの創業者は、「観光は平和への最短の近道」と題する文章を寄稿して業界の協調を呼びかけている。