「New Distribution Capability(NDC)」の言葉が初めて登場してから11年目だった2023年は、そのNDCの普及の過程においてひとつの節目になる1年だったと言えそうだ。

その主役はアメリカン航空(AA)。2022年の末に、2023年4月までにNDC接続を完了するよう最後通牒を突きつけ、実際に4月には全運賃の40%を従来型のEDIFACT接続から引き上げ

こうしたなかで米国トラベルアドバイザー協会(ASTA)は是正を求めて米運輸省(DOT)に訴え、英国の業務渡航の業界団体ビジネストラベルアソシエーション(BTA)もこれを支持。これに対してアメリカン航空がこうした動きを「あさはか」であると批判したことも取り上げた。

この対立の構図には解消の兆しもなく、先週にはASTAがAAの批判に対する反論をDOTに提出。「航空会社が激しい競争にさらされており、NDC体制への急激な転換は消費者の求めに応じたもの」であるとするAAの主張は根拠がなく、論点をすり替えたもので、自らに都合のいい事実のみを選別していると逆に批判。

そして、AAの主張は「AAが寡占的な業界において支配的な市場地位を保持していること、そしてその地位に関連する権力を乱用して消費者および航空券を販売するうえでの競合企業の双方に重大な不利益を与えていることに関して、強力で実質的な証拠に反論する有意義な努力」が欠けていると主張している。

一連の動きのなかでユニークなのはAAの苛烈なほどの強硬姿勢で、すでに営業の体制も大きく刷新。不退転の覚悟かは分からないが、そう表現したくなるほどの振り切り方と言える。

ちなみに、こうした姿勢に対しては同じ航空会社からも疑問の声が。the Company Dimeによると、エールフランス航空(AF)のCCOは最近の投資家向け説明会でAAの流通戦略を非難。

具体的には、「アメリカン航空は新たな流通戦略の先頭を走っているつもり」だが、NDCによるコスト削減は当初意図した通りにはできてなく現実的には今のところ「あるに越したことはないが非常にイールドの低いトラフィックを引き寄せるもの」に留まり、GDSを利用する法人やTMCからのイールドはそれに伴って発生するコストよりもはるかに優れているため、魔法のようにスイッチで切り替えてそこに背を向けて立ち去るのは不可能としている。

また、デルタ航空(DL)やユナイテッド航空(UA)は「確実に」AAからシェアを獲得しており、AFもDLのパートナーとしてその恩恵を受けているとも語ったという。

旅行会社側にも温度差はあるものの、テクノロジー投資に余念がなくNDCへの対応も進めているアメリカンエキスプレス・グローバルビジネストラベル(AMEX GBT)のCEOですらAFのCOOのコメントの多くに同意している模様。「我々との関係を強化し業務渡航市場でのシェアを拡大したいと考えるサプライヤーの方が、その反対よりもはるかに多く見受けられる」という。

とはいえ、だからといってNDCのない世界に戻ることはありえず、重要なのは変化「するかしないか」ではなく「いつどのように」変化するかだ。フィンエアーのように2025年にはEDIFACTでの航空券流通を終了すると明言する航空会社もある。

2024年は、その内容はさておきDOTがASTAからの申し立てについてなにかしらの判断をくだすことになるはず。仮にAAの主張が通ってもAFのような見方もあるためどちらにしても変化はこれまで同様に緩やかに進む可能性もあるが、航空券流通の未来に向けて潮目が見えてくる1年となりそうだ。