ドイツ発のホスピタリティ産業向けコンサルティング企業であるh2cはこのほど、ホテル運営のデジタル化の現状について全世界のホテルチェーンを対象に調査を実施し概要を公表した。調査に応じたチェーンの数は84で、施設数では1.7万軒超、客室数では210.6万室以上の規模となる。

客室販売のチャネルごとのシェアを見ると、公式サイトとOTAを合計したオンラインの比率は2020年に57%、2022年に59%、2023年に63%と少しずつ増加しているが、特に公式サイトでの直販は2020年と2022年が19%、20%であったのに対して29%と大きく伸長。OTAは37%、39%、34%となった。オフライン側のうちGDSは安定している。


オンライン比率の上昇を牽引しているのはCRM戦略やテクノロジーへの投資を続けているチェーンで、レポートでは公式サイトにおける質の高いコンテンツやロイヤルティプログラムでの施策、公式アプリなどが成果に結びついていると指摘している。

チェーン各社がデジタル化を進める目的を聞いた質問では、顧客の体験や満足度の向上、リテンションなどが87%と最多。2位以降は人手不足対策の51%、競争上の優位を得るためと人件費の削減がそれぞれ39%、リモートワークなど業務の柔軟性の向上が33%、二酸化炭素排出量の削減などESGが29%などとなった。人手不足や人件費は大規模チェーンほど大きな課題として受け止められている様子だったという。

そしてデジタル化の現状については10点満点中の6.0点となり、2021年の3.6点からは大きく上昇したものの依然として改善の余地が大きいとの認識が見られる。一方、テクノロジーベンダー側は7.0点をつけたという。

記事では、デジタル化を進める上での課題や、レピュテーション・マネジメントや決済、チャットボットなど様々なテクノロジーの活用状況などについても取り上げられているところ。

例えばAI/機械学習についてどの分野での活用に期待するかの質問では節電や節水などが2021年には47%だったところから77%へと大きく高まったほか、メンテナンス費用の削減や自動ルームアサインも50%台から70%台へと上昇。一方、人員配置の自動化については70%から67%へとわずかに低下した。

このほか、アップセルにおけるテクノロジー活用では、予約からチェックインまではある程度の取り組みがされているものの、滞在中の宿泊客へアプローチについては27%のみに留まり、今後注目されていく可能性が指摘された。こうしたアンシラリー販売による収益が収益全体に占める割合は平均して15%に留まるものの、ポテンシャルとして拡大できると回答者が考えた割合は29%だった。