「まん防」が終わった。まだ繁華街には出ていないので実際の様子は分からないが、Twitterなどを見ていると賑わいも戻りつつあるようだ。

そしてそれに対して、これまでは「状況が改善しただけですぐに売るものがあるなんて恵まれた話じゃないか」と羨ましく思っていたものだが、今度は違う。ついにこちらの世界でもトンネルの先に光が見えてきている。

これまでも「きっと」「おそらく」「もうすぐ」と半分願望のような予想を書いてきたが、今回はそうではない。明らかに変化が起きている。

まず各国政府が物凄い勢いで開国している。今週の週間ランキングでも1位に「東南アジアで開国ラッシュ、「一番開かれた国」はどこ?」、3位に「世界で開国進む、主要航空市場の半数超が隔離廃止-アジアは遅れも」が入ったが、もはや記事として紹介しきれないほどだ。

各国の渡航情報を集約し簡単に確認できる非常に優秀なツール「sherpa」によると、3月25日22時現在「日本のパスポート」で「日本出発」で「ワクチン接種済み」であれば、なんと84ヶ国が検査や隔離なく入国を受け入れてくれるらしい。未接種でも23ヶ国に入国可能だ。

実際には、接種済みの場合の数は昨年10月でも50ヶ国あったわけだが、オミクロンによる数ヶ月間の停滞を経ての今であり、現在のペースは昨年後半の様子見モードの頃とはまったく異なっている。当時は英国やシンガポールなどが急進的ともいえる方針転換をして、その他の国はそれを注視しつつ慎重さとのバランスを取っていたが、現在はまさに我先にの状況だ。

そして、そうした世界の潮流の中で、旅行観光産業内でもリカバリーに向けた胎動が始まっている。諸外国の業界団体に比べてコロナ禍での積極性が感じにくかった日本旅行業協会(JATA)が4月にハワイと韓国へ視察団を派遣することを発表したし、筆者のところにもFAMの話が複数届いている。

肝心の日本政府は(ウクライナ問題への対応と同様に)どうもぼんやりとした姿勢で、相変わらず「何がどうなった時にどうする」というロードマップがなく主体性が感じられないのが残念だが、内圧も外圧もあるわけで開放のペースが早くなることはあっても遅くなることはまずないだろう。

日本は外国人観光客の早期の受け入れには動かないという見方もあるが、果たしてどうだろうか。これは例によって憶測の域を出ないが、国際観光の世界だけを考えてもこれからは需要や業界内のリソースの苛烈な奪い合いが始まることになり、その中で他の動きを指をくわえて見ていれば、コロナ禍でも堅持を表明した「2030年訪日外客6000万人」の目標は遠のいていく。

いずれにしても、あとは凶悪な変異株が出現しないことを祈るばかり。とはいえこれも、オミクロンの時のように各国が強烈な勢いで入国を停止することなく緩やかに対応できればこれまでの堂々巡りから抜け出せることになるわけで、コロナ禍の収束(新型コロナウイルスのではなく)にとっては必要な一歩とも考えられる。香港では6月に第6波を予測する研究もあるが、その研究は同時に往来を完全に再開しても新型コロナウイルスの感染拡大とはほぼ無関係ともしているところ。潮目は確かに変わっている。(松本)