気付けば3月も3分の1が過ぎ、あと19日で第1四半期、ないしは2021年度が終わる。昨年末には「さすがに4月には」と思っていたが、この3ヶ月に動きがなかったわけではないとはいえ期待していた水準からは程遠い状況だ。

おそらく今年の事業計画を立てる際には多くの会社が「さすがに4月」説をベースにしたのではないかと思うところで、例えば昨年11月の会見でJTBは年度末(3月末)には国内旅行が19年度並みに戻る可能性、海外旅行も4月以降にはっきりと数字の回復が見られる可能性を指摘していたし、JALも12月に3月か4月頃には「国際線の回復がいよいよ始まる」と期待していたが、残念ながら外れてしまった。

今後の推移を考えても、月末に「開国先進国」並みになることはないだろうし、来月末でも可能性が高いとは思えない。では6月末は?――やっぱり「さすがに」とは思うが、期待しない方が良いという思いも否定できない。

以前、どことは言わないが日系航空会社の子会社社長にインタビューをした際、なかなかビジネスモデルが変革できない旅行業界について「もしご自身が旅行会社の社長だったら?」と聞いたところ、「俺だったらたたむね」と即答されたことがある。

その会社はそうした旅行会社とも取引する立場にあったので、業界メディアの取材に対してなぜここまで横暴で思いやりのない発言をと内心呆れ返ったものの、こうして2年以上も漫然として動かない社会や業界を見ていると、今はそれくらい大胆な決断も必要なのかもしれないと思ってしまう。

ましてや、6月末までに今期待している以上の動きが出始めていたとしても、その先には今週最も読まれた記事の通り「自業自得」の材難に直面する可能性が高い。

「自業自得」は従業員を惹きつける努力の欠如を意味するが、これは旅行観光産業全体に言えることかもしれない。ホテル業界も、筆者が現場で働いていた頃から、ホスピタリティの専門学校や有名大学を卒業したやる気ある若者たちが「仕事は好きだけど未来が見えない」と言って辞めていっていた。

ただ、若者の労働力を使い捨てのように扱うことでしか存続できない企業などまったく持続可能でなく、それが改善されるかもしれないと思えば必ずしも否定するべき話ではない。

それに、「俺だったらたたむ」についても、過激な言い方をすれば「パイの食い手」が減れば1人あたりの取り分は増えるわけで、そうなってくれば業界の景色も随分変わってくるだろう。

東京ではあと10日もすると桜が開花するようだ。無理やりでも前向きに捉えて目の前の物事を楽しんでいきたい。(松本)