旅行観光産業内でも気候変動対策やデスティネーションへの負担軽減の要請が高まっているが、豪州発の旅行会社Intrepid Travelはこのままでは2040年にも今の形態での旅行は存続できなくなっている可能性があると継承を鳴らしている。Intrepid Travelはサステナビリティや社会問題への取り組みに大きく力を割いている旅行会社で、米TIME誌の今年の「影響力のある会社100社」に旅行会社として唯一選出されている。

メッセージは、10月4日に同社が発表したレポートのなかで示されたもの。我々が今旅行だと考えているものは「絶滅の瀬戸際」にあり、観光は人や地域社会の生活をより良く変革する力を持っている一方で、現在はその力を発揮できていないと指摘。持続可能性のさらに先に進み、旅行観光産業が方向性を修正し、旅行が真に恩返しできるようにしなくてはならないと訴えている。

レポートでは、海面上昇や気候変動によりモルディブやベネツィア、アムステルダム、マイアミ、ニューオーリンズなどが危機にさらされている状況などを取り上げたうえで、温室効果ガスの排出量の制限や人気旅行先の変化などを予測。

排出量については、個人が現在年間で排出している二酸化炭素が米国では16トン、豪州で15トン、英国で11.7トンであるところ、本来は2.3トンに抑える必要があり、個人の排出量を「カーボンパスポート」のような形で制限することになると予想。ちなみに2.3トンは、リオデジャネイロ/リヤド間の往復フライト1回のみに相当する。

また、行き先についても「2040年代の旅行者は、現在の旅行者が容易に受け入れている、地平線を広げるような体験を見送ることを余儀なくされる」と予測。これまでは太陽を追いかけるように旅行先が選ばれていたが、これからは日差しを避けて日陰が追い求められるようになり、南欧やカナダ、ハワイ、豪州などから東欧や北欧などへと人気が移る可能性があるとしている。また、同時にそうした現在の人気観光地は、多くの消費者にとってVRなどバーチャルの世界でしか楽しめなくなるかもしれないとしている。

このほか、旅行者が「より深い人間的なつながり」を築くことに重点を置くようになり、旅行は「商品主導型」ではなく「社会主導型」に変化するとも指摘。超高速の寝台列車の台頭なども可能性として挙げられている。

Intrepid Travel共同設立者兼会長のダレル・ウェイド氏は、「気候変動がもたらす直接的で破滅的な影響は、あまりにも長い間、遠い将来のことと見なされてきた」ものの「もはや差し迫った出来事ですらなく今まさに起こっている」問題とし、「現在のモデルは持続不可能であるため、観光業は進化し再生可能なものにならなければならない」と強調。

その上で「我々は、未来のビジネスが従来とは異なるものでなければならないことを認めなければならない。時計の針は刻々と進んでおり、地球と旅行観光産業の未来に残された時間は限られている。早急な集団行動と革新が必要だ」と付け加えている。